「あのおっかな~いヘーラーの秘書さん」
女神仲間のKさん、イーリスを評して曰く。
「とっても優しくて、いつも喧嘩の仲裁役ってところかしら。何てたってあの怖~いヘーラーさまの使者をやっていて、命を落とさないだけでも特筆に価するわ。だからある意味、イーリスって凄い女神なのよ」
こんな感じでイーリスの評判をとても良かった。
彼女は虹の神さま。ヘーラーを中心に色々な神の使者役となって今日は東、明日は西と大活躍をしていたのだった。
神と神の間に虹の架け橋を架けるように、善良な心で様々に尽くしていたのだ。
例えば、大きな嵐があれば、荒れ果てた大地を照らす光を使って、七色のアーチを架けて人々の心に希望と暖かさで満たした。
例えば、大きな嵐があれば、荒れ果てた大地を照らす光を使って、七色のアーチを架けて人々の心に希望と暖かさで満たした。
ところが、そんな優しいイーリスにとんでもない事件が勃発する。いつものように、この手の事件の首謀者はゼウスだった(このヒヒ爺は何を考えているんだか、えっ、頭は使わずに下半身を使ってるって…… 失礼しました)。
こともあろうに、全能の神ゼウスは、この評判の良いイーリスをとんだスキャンダルに引きずり込んでしまうのだ。
ゼウスは、アプロディーテーと危険なアバンチュールの真っ最中。もちろんそれは世間、特に妻のヘーラーには内緒のこと。
しかし、いつものことというか、毎度のことというか、二人の間に息子のエロースができてしまう(これには諸説があります)。
ゼウスは、アプロディーテーと危険なアバンチュールの真っ最中。もちろんそれは世間、特に妻のヘーラーには内緒のこと。
しかし、いつものことというか、毎度のことというか、二人の間に息子のエロースができてしまう(これには諸説があります)。
しかも、その辺をしらっと、惚けておけばよいものを、何を慌てたのかゼウスは、苦し紛れに ――エロースは、虹の神イーリスと西風の神ゼピュロスとの間にできた子供である―― などと、とんでもないことを言い出したのだ。
ヘーラーはもちろん怒った。でも彼女は、この噂をすぐに嘘だと見破っていたので(そうそうゼウスの手に騙されないよなぁ)、子供云々で怒ったいるわけではなく ――こんな噂を立てられて黙っているとは何事か―― と、イーリスをなじったのだ。
イーリスは一切の弁解をしないで、ただそっと涙を流して、そしてヘーラーに微笑みかけるだけ。すると雨上がりの雲の間から虹のような光が、彼女の涙に輝いたのだった。
このときばかりは、ヘーラーもオリュムポスの記録において、後にも先にも唯一初めて、簡単に怒りを静めたという。
このときばかりは、ヘーラーもオリュムポスの記録において、後にも先にも唯一初めて、簡単に怒りを静めたという。
ちなみに、これが縁かどうかは知らないが、イーリスは、西風のゼピュロスを夫にしたともいわれている。
それにも一つ。このイーリスは、以前紹介した"臭い、うるさい、意地汚い”の三拍子揃った怪物ハルピュイアのお姉ちゃんともいわれている(う~ん、似ての似つかないとはこのことか)。
それにも一つ。このイーリスは、以前紹介した"臭い、うるさい、意地汚い”の三拍子揃った怪物ハルピュイアのお姉ちゃんともいわれている(う~ん、似ての似つかないとはこのことか)。