「魔法大好き女神も、実は可愛いツンデレ娘」
“鷹”を意味するこの女神さまは、魔法が大のお得意。もちろん美人・美声のこの女性は“女神”というより、“女王様”の方が断然に合っていらっしゃる。と、いうのも、言い寄ってくる男どもに飽きると、片っ端からみんな動物に変えて、ペットとして飼い、周りに侍らしていたという。
「この世の男は、すべてあたくしの物」
なんてことを口走りそうな女神だった。
こういう人ほど、手に入らない物があると、さあ大変。あなたの傍にもいるかもしれないよ。こういう人(男女問わずにね)。
暇を持て余していた彼女の目に一艘の船が映った。それはオデュッセウスの乗る船で、今まさに、キルケーの住む島へ上陸して、乗組員と共に島の探索に出かけようとするところだった。
「あら、あたくしの好みのお方…… 」
オデュッセウスを一目見て気に入った彼女は、先発隊の乗組員を歓迎し、酒やご馳走を振舞った後、全員を豚に変えてしまった。
彼らを助けに、きっと船長のオデュッセウスがやってくると思ったからだ。
彼らを助けに、きっと船長のオデュッセウスがやってくると思ったからだ。
案の定、オデュッセウスはやってきた。
「なんてことを…… 。彼らを元に戻して返してもらおう!」
「お黙りなさい。あなたもあたくしのペットになるのよ。でもご安心なさい。あたくしの一番のお気に入りにしてあげるから」
魔法を放つキルケー。危うしオデュッセウス! ところが、キルケーの放つ魔法が全然効かない。
実はオデュッセウスは、ここに来る前にヘルメースから、彼女のことを聞き、魔法が効かなくなる術をかけてもらっていたのだ。
実はオデュッセウスは、ここに来る前にヘルメースから、彼女のことを聞き、魔法が効かなくなる術をかけてもらっていたのだ。
初めての敗北。 ――自分を負かす男がいるなんて―― ショックと悔しさでいっぱいのキルケー。しかし、それだけじゃない何かが彼女の中に芽生えていた。
彼女は初めて“恋”なるものを知ったのだ(結構可愛いところがあるんですね)。
強きで通してきた心は、一度崩れると脆い。オデュッセウスの言うことを素直に聞いて、乗組員を元に戻した。
彼女は初めて“恋”なるものを知ったのだ(結構可愛いところがあるんですね)。
強きで通してきた心は、一度崩れると脆い。オデュッセウスの言うことを素直に聞いて、乗組員を元に戻した。
もう、以前の彼女ではない。ただ恋する乙女になったキルケーに、オデュッセウスも魅力を感じます。
そりゃあ、その容姿と声だけでも十分、男たちを虜にしてきたんですから。
そりゃあ、その容姿と声だけでも十分、男たちを虜にしてきたんですから。
キルケーは、オデュッセウスとの間に息子テレゴノスをもうけた。幸せな日々を送っていた二人だったが、三年目のある日、オデュッセウスに再び海への熱情が沸き上がる。
「海が好き~~!」
根っからの海の男だから仕方がない―― 。
一度言い出したら聞かないことをよく知っている彼女は、あえて止めることはぜず、彼の航海の無事を願って、これから遭遇するであろう様々な困難を予言してあげたという。
悪女も恋すりゃ、可愛い娘、まあ、そんなツンデレなお話でした。