「ゼウスとヘーラーのひとり息子、軍神のひとりだが、暴れると恐い性格に難あり」
アレースは珍しく? ゼウスとヘーラーの間にできた子供。殺伐とした性格で、戦争と人殺しに生きがいを感じるちょっと困った奴である。
戦場を馬で牽かせた戦車で駆け巡ることが最高の快楽だった(う~~~ん)。ちなみに戦車を牽く馬の名前は「災難」と「恐怖」で、今で例えるなら、暴走族(でも、基本的にひとりだから単独暴走行為かな?)なのだ。
さすがのオリュムポスの神々もこの性格についていけなかったみたいで、みんなから嫌われていたらしい。アレースと親しく付き合っていたのは、戦争で人が死ぬと自分の国の民衆が増えるということで喜んだ冥界の王・ハーデースと、アレースの双子の妹である不和の女神・エリスくらいだった。
と・こ・ろ・が・である、こんな彼にぞっこん参ってしまった女神がいた。あの愛と美の女神・アプロディーテーなのだ。たぶんアレースの獣のような激しさと残忍なまでの冷酷さに魅了されてしまったらしい。
彼女が曰く「あの人のフツーじゃないとこがいいの」と、言ったか言わないかは知らないが、まあ、そういうことらしいのだ。
アプロディーテーは夫のヘーパイストスの留守を幸いに真昼間から危険な情事と洒落込んだ。ところが、と・こ・ろ・が、まさに危険な情事ということで、すでにこの浮気に気づいていたヘーパイストスは、間男の現場を押さえるべく、蜘蛛の網ほどに細く、しかもとても頑丈な鎖網を作ってベットの上に仕掛けておいたのだった。
そして愛し合う二人の上に仕掛けておいた鎖網が落ちてきて、がんじがらめ縛られて動けないまま、あられもない姿で捉えられてしまい、そのまま他の神々の前に引き出され、夫の糾弾を受ける妻と間男が…… アレースにとってと言うより、世の男たちにとってこれほど恥ずかしいこともなかったんじゃあないだろうか。
ところで妹のエリスも兄に負けず劣らずの破滅的な性格の持ち主で、彼女にとってアレースの戦車はさしずめ遊園地の絶叫マシンよろしくってな具合で、興奮のあまりアレースの隣で黄色い声をあげることもしばしばあったらしい(なんだかなあ~)。
当然のことながら彼女も他の神々から毛嫌いされていたのだが、あからさまにそれを見せることはしなかった。なぜなら、彼女の恨みは永遠に続くという恐ろしいものだったからである。
まぁ~、それにしても、夫婦で作った子供たちがこれじゃねぇ…… さらに言えば、ゼウスが他所で作った子供たちの方ができが良いときているとくれば、ゼウスが浮気に走り、ヘーラーが嫉妬深くなるのもうなずける気がする。