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「農場にくらして」

2011-06-04 00:18:11 | アリソン・アトリー

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 『農場にくらして』、アリソン・アトリー (著)、上条 由美子 (翻訳)、松野 正子 (翻訳)、岩波少年文庫(出版)







 <あらすじ>
 イギリスの片田舎。丘の上の農場ウインディストーン・ホールに住むスーザンが、家畜の牛や羊鶏。
 農場を飛び交ういろいろな鳥たちや虫たち。四季を通じて咲きほこる花々や木々たち。
 そして風までを友として暮らす田舎の素朴な暮らしを描く。


 スーザンは、農場から遠く離れた学校に通うことになった。でも道行く途中には、昼なお暗く木々が溢れるダークウッドを通らねばなりません。
 自分が怖がっていることを森に知られないように、必死に平気を装っています。なぜなら森に自分が怖がっていることを知られてしまうと、森に住む不気味な妖精たちに悪さをされると信じていたからでした。


 スーザンの母親マーガレットは、熱心なキリスト教徒でした。毎週日曜日の礼拝には欠かさず参加をしていて、スーザンも一緒に出かけていました。
 朝の礼拝では、牧師が説教をする中で『偶像を崇拝してならない』と繰り返されます。スーザンは、自分のお気に入りの木彫りの人形ローズを愛していました。
 スーザンは、牧師の言われたとおり(彼女が勝手に、そのように解釈しているのだが)泣く泣く彼女はローズを牧場の大きな木が生える根元に埋めました。
 でも、夜ベット中で耐え切れずそっと家を抜け出して、ローズを掘り返しにいきました。


 学校に徐々に慣れてきた彼女は、友達もたくさんできました。
 ある日、友達50人を家へ無断で招待し、小さな女の子の集団に母のマーガレットはびっくり仰天。
侍女のベッキーと2人で50人分のお茶とお菓子を用意し、家の中は大騒ぎ―― 。
 スーザンは、母からきつくお叱りを受けたのでした。




 <感想>
 アリソン・アトリーは、イギリスの童話作家、ファンタジー作家で、幼少期をクロムフォードの農園で過ごしました。
 ダービーシャー、ベイクウェルのレディ・マナーズ・スクールの奨学生として進学、オーエンズカレッジ(現在のマンチェスター大学)でダービーシャー州奨学金により物理学を専攻し、1906年開校以来2番目の女性の優等卒業生として卒業。
  その後ケンブリッジに進学し、そこで出会った科学者のジェイムス・アトリー と結婚。
 しかし、第1次世界大戦によって健康を害していた夫は1930年に死去、息子を抱えたアリソンは生活の手段として、幼い頃を過ごしたダービーシャーの自然を題材にした物語を執筆することにしました。
 そして本作が彼女の1作目に当たります。


 この「農場にて」は、彼女が幼少のとき過ごしたクロムフォードをモデルに 幼い少女を主人公にしてウインディストーン・ホールでの四季を通じた一年を端正な文章と描写で、小説仕立てにしたアトリーの自伝的作品です。


 アトリーの作風は2つあって、きっちりと端正に仕上げたものと、手編みのセーターのような、ちょっと編み目がとんでいたり、袖の長さが違っていたり… 、そんな感じの作品に分けることができます。
 本作は、後者に当たるもので、ひと目ひと目が丁寧に愛着をこめて書かれています。素朴で質実、暖かくて独特な美しさをイメージさせる文章は、読む者を19世紀のイギリスの片田舎へ連れて行ってくれます。


 主人公スーザンの目を通して描かれる農場での暮らしは、今の現在人にとってとても新鮮で面白味にあるれた作品です。
 一文一文をじっくりとゆっくりと読んでいきたい作品です。




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