名古屋市民ギャラリーで、能面を制作(面打ち)する2つのグループがそれぞれ開いている作品展を見てきました。愛面会と宏春会。会の歴史に多少違いはあるようですが、根っこは同じで指導者も共通するなど、互いに切磋琢磨して面打ちに励んでいるそうです。
僕は能や狂言に接する機会もなく、全くの門外漢ですが、面打ちの難しさ、楽しさ、奥の深さを多少とも知ることができました。25日まで。
面打ちについて先刻ご承知の方には申し訳ない記述ですが、面打ちは室町時代から安土桃山時代にかけて打たれた面(本面)を基本形として、模作(写す)すること。だから、絵画だと文化遺産的絵画の摸写は別として多くは独自性を重んじますが、面打ちの世界では長い歳月の経過による本面の汚れなども写すことになるそうです。
といっても、本面の実物を手にして事細かに見ることは難しく、写真に頼ることになります。それに技術的力量だけでなく、打つ人の個性も出るでしょう。展覧会でも、同じ本面を写したはずなのに違った感じの作品を目にしました。
本面は基本的な60面を含めて約250面。何を写すかを決めると、その寸法を測り、ヒノキの角材をつくり、粗削り、彫り、磨き、日本画の絵の具などによる彩色、目や鼻を入れるなどの工程を進めます。
「面打ちを始めて40年。私の場合は年に5面ほど打ちます。彩色でも20回は塗り重ねるなど時間がかかりますが、彫っているのが楽しくて」と、両方の会に所属して愛面会では講師を務める女性面打師の古海素功さん。
エッ、重ね塗りが20回もですか。 だから、角材が意思と感情を持つ人間や動物の顔になるのでしょうね。奥の深さを知りました。
ヒノキの角材から完成まで=面打ち工程の一部