今年の花見詣でを、岐阜県本巣市の「根尾谷淡墨桜」で締めくくりました。樹齢の推定約1500年。地元民ら多くの人たちの献身的な再生・延命・保護活動によって、国の天然記念物に指定された淡墨桜。10日に訪ねると、花舞台の主役であり続ける大スターは、今年も白鳥が羽を大きく広げるようにして迎えてくれました。
今回の淡墨詣では、JR大垣駅で乗り換える樽見鉄道を利用しました。花見期の渋滞に巻き込まれる車よりも、新緑に包まれた根尾川の渓谷や無人駅を各駅停車で行く方が、と考えたからです。結果は、一両だけ(2両編成のダイヤもある)の車内で立ち続ける1時間余になりましたが、車窓からの風景は期待通りでした。
樽見駅から歩いて15分。淡墨桜のある公園です。
ちょうど満開。幹周りが10メートルほど、枝回りは20メートルから27メートルほどあるという優雅な姿は圧巻です。心なしか数年前に会った時よりも若くなったように感じました。
背丈が70センチほどの淡墨桜の苗木も売られていました。
「2、3年後には花が咲きますか?」と、やや高齢の女性客。
「いや、10年は待ってもらわないと」と苗売のおじいさん。
「そんなに?私が持たないわ」と笑う女性。
春の日差しを浴びた公園は、小説や歌、絵画でも親しんだ淡墨桜のホンモノとの出会いや、山里の味を楽しむ人でいっぱいです。
そんな中でオカリナの音色が聞こえてきました。地元の根尾中学校の生徒たちによる演奏です。
この日は「総合的な学習」の時間。30人ほどの全校生が淡墨桜の花見にやってきた人たちと触れ合い、自分たちの町をより深く知ってもらおうというわけです。
オカリナでの「ふるさと」の演奏や、班に分かれて客たちを案内したり・・・。
ある班に耳を傾けると、自分たちで作成したパンフレットを手渡して淡墨桜の歴史、桜や特産の菊花石についての豆知識などを披露していました。
「淡墨桜は長細い葉のエドヒガンという種類ですが、丸い葉で桜餅を包んでいるのはオオシマザクラ。この2つの品種をかけ合わせて改良したのが、ソメイヨシノ(染井吉野)です」
「近くに、うすずみ温泉というのもありますから、楽しんでください」
淡墨桜を指差して、こんなクイズも。「淡墨桜の枝を支える支柱が立っていますが、全部で何本あるでしょう?」
「34本」と僕。「惜しい」と生徒。周りから「じゃあ37本」「39本」と声が飛びます。
正解は「44本です」。ここでも笑いと拍手。生徒たちだけでなく、私たちも「生きる学習」を楽しみました。
初めて出会った人に話しかけ、ガイドをしたり、オカリナのリクエストに応える中学生たち。
もう半世紀以上前だけど、僕にもこんなに目を輝かせた時代があったんだなあ。
そこで僕は僕自身に対して、こんな宿題を課してみました。