歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

《2020年度 わが家の稲作日誌 その1》

2020-12-28 17:08:13 | 稲作
《2020年度 わが家の稲作日誌 その1》
(2020年12月28日投稿)




執筆項目は次のようになる。


・【はじめに】
・【2020年の稲作行程・日程】
・【2020年の稲作の主な作業日程の写真】
・2020年の稲作をふりかえって
・田植え後の水管理
・田んぼの雑草
・【2020年の稲の生長記録の写真】






【はじめに】


 今年は新型コロナウイルスの問題で振り回された一年であった。いまだ収束の兆しは見えない状況である。
 稲作は自然が相手なので、3密は回避できるものの、地域や会合の場ではどうしても注意しなくてはならない場面も当然でてきた。
 去年、父親を亡くして、田んぼを引き継ぎ、耕作することになった。田植えと稲刈りはどうしても機械がないとできないので、委託している人のお世話になりつつ、田んぼの水管理、草刈りは自分一人でせざるをえない。やはり自然が相手だから、人間の思うようには事は運んでくれない。せめて、天気の情報などをきちんと知ってから、田んぼの管理に反映させることとなる。
 去年よりは、「おいしいお米」「安心して食べられるお米」をめざして、稲作に励むこととなる。経験不足は知識で補わざるをえない。そこで、今年は2冊の本を読んで勉強してみた。
それが、次の2冊である。
〇松下明弘『ロジカルな田んぼ』(日本経済新聞出版社、2013年)
〇佐藤洋一郎『稲の日本史』(角川選書、2002年)

上記の2冊については、次回以降のブログで、次のような執筆項目で詳述したい。
≪その2 松下明弘『ロジカルな田んぼ』を読んで≫
・松下明弘氏の『ロジカルな田んぼ』という著作
・松下明弘氏のプロフィールと『ロジカルな田んぼ』
・静岡県の専業農家松下明弘氏の年間スケジュール
・代かきの重要性
・なぜ田植えが必要なのか
・松下氏による雑草対策
・理想の反別収量
・コシヒカリについて
・おいしいお米とタンパク質の関係
・玄米食のススメ
・米ヌカの効用
・酒米の山田錦
・お米の多様性が消えた理由
・【参考 コシヒカリの系統と「きぬむすめ」】
・【コシヒカリの特徴】
【松下明弘『ロジカルな田んぼ』日本経済新聞出版社はこちらから】
ロジカルな田んぼ 日経プレミアシリーズ

≪その3 佐藤洋一郎『稲の日本史』を読んで≫
・佐藤洋一郎氏のプロフィール
・佐藤洋一郎氏の『稲の日本史』の特徴
・「稲の日本史」の年表
・イネの収量
・反収あたりの最高記録
・水田の維持と除草
・水田耕作のこころ――1本のヒエも許さないことの意味
・モチ米とウルチ米 2種類のデンプン
・調理の方式
【佐藤洋一郎『稲の日本史』はこちらから】
稲の日本史 (角川ソフィア文庫)


こうした“座学”を勉強しつつ、今年の稲作行程を振り返ってみたい。


【2020年の稲作行程・日程】


2020年の稲作行程・日程を箇条書きに書き出してみた。

・2020年3月8日(日) 曇り 12℃
  8:00~9:30 袋路の水路そうじ 
・2020年3月12日(木) 晴 15℃
  10:00 春耕作の依頼に伺う 
・2020年4月22日(水) 曇り 12℃
  14:00~15:30 一人で草刈り  
・2020年4月24日(金) 晴 13℃
  依頼人により畦塗り終了
・2020年4月27日(月) 晴 19℃
  14:00~16:30 草刈り仕上げ  畦の斜面の草刈り、キックバックに注意
・2020年5月 7日(木) 晴 12~19℃
  11:45 依頼人より電話 水溜めを開始してよいとのこと 数日後に中切り
  14:30~15:00 水溜め開始  
  15:00~16:30 草刈り 田んぼの道と真ん中の畦 前回の干し草をゴミ袋に
  土嚢に土を入れ、水路に石と土嚢を置いて、水を溜め始める
  ※下の田の水溜めに特に注意すること(下の田んぼは水入りが少ない)。溜めすぎに気を付けること
・2020年5月 8日(木) 晴 21℃
  14:30~15:45 水溜めの袋替えと草寄せ 
・2020年5月 9日(土) 小雨 18℃
  9:45~10:15 水止め(水が十分溜まっている) 
・2020年5月13日(水) 晴 16~22℃
  午前中、依頼人により代かき終了
  14:45~15:45 水の調整   
(特に下の田んぼの北側の水の排水口は水が漏れるようなので、畦波板を鋏で切り差しておく)
・2020年5月17日(日) 曇り 16~21℃
  7:50 依頼人より電話あり 今日、田植えをするので、水の調整をすること
      水が多すぎるので、地がポツポツと見えるくらいに、しておいてほしいと
  8:00~9:30 上下の田んぼの水を少し抜いて調整
  依頼者により、田植え終了
・2020年5月21日(木) 晴 17℃
  11:00~ 水の調整
  14:30~17:00 田んぼの四隅の補植
   上の田んぼの北側は苗の活着が悪い 真ん中の畦に沿って列ごとに補植
  ※なお、カエルの卵や泡をすくい取り除く
・2020年5月23日(土) 晴 23℃
  9:40~10:40  水足し(下の田んぼ少ない)
・2020年5月24日(日) 晴 26℃
  10:00~10:30  水足し(上の田んぼ少ない)
・2020年5月25日(月) 晴 24℃
  9:45~10:15  水調整
・2020年5月27日(水) 晴 22℃
  14:20~15:20  水調整 北側の畦の草刈り
・2020年6月2日(火) 晴 17~27℃
  8:40 依頼人に春耕作代金の支払い
  9:00~10:00  水調整 
  14:30~15:30  草刈り
・2020年6月3日(水) 曇り 25℃
   9:20~10:20  水入れと草処理
・2020年6月4日(木) 晴 28℃ 暑い
   9:50~10:40  水入れと草処理(45ℓと30ℓのゴミ袋に)
・2020年6月8日(月) 晴 28℃ 
   10:00~11:00  水入れ
・2020年6月10日  ※中国地方の梅雨入り
・2020年6月12日(金) 曇り 26℃ 
   10:00~10:30  水入れ(とくに上の田んぼ)
・2020年6月14日(日) 雨 26℃ 
   10:30  水を見に行く
・2020年 6月 17日(水) 晴 26℃
   15:00~16:30草刈り
・2020年 7月 2日(木) 曇り 23℃ 湿度75% 半夏生
 10:30  中干し 水止めの土嚢を外し、石を取り除く
・2020年 7月 16日(木) 曇りのち晴 25℃ 
   14:10~15:45 草刈り(畦道)
・2020年 7月 30日(木) 晴 30℃ 湿度80% ようやく梅雨明け
・2020年 7月 31日(金) 晴 30℃ 湿度75% 
   9:50~11:10 草刈り(通り道)
 <注意>
・熱中症対策~30℃の中の日差しがきつい。マスクが汗でくっつき鼻を出さないと息苦しい
・刈り払い機のキックバックに注意~特に斜めの畦の草刈り
・ズボンの汚れ~飛沫してズボンに草や土がつく
・2020年 8月 3日(月) 晴 25~32℃
  10:30~11:10  西廻りの境界の立ち合い
  14:00~15:30  水入れ(北側を土嚢で塞ぐ)と草刈り
・2020年 8月 4日(火) 曇り 27℃
  10:00~11:00  水入れを止める、草処分(ゴミ袋45ℓ)

≪稲作情報≫
〇出穂後のカメムシ類による吸汁被害を軽減するため、畦畔の草刈りは出穂10日前までに行うこと(『稲作だより』No.3 令和2年6月5日号)
〇きぬむすめは、最高分げつ期頃(5/5~7/7)に「茎数が少ない」「葉色が薄い」場合は、中間追肥を窒素成分で10a当たり1kg程度施用すること

・2020年 8月 7日(金) 曇り 28~31℃ 立秋
  9:30~11:00  田んぼが乾いていたので、水入れ(浅水管理を心掛ける)
 ※今日は立秋なのに、依然暑い。午前7時なのに30℃で湿度70%もあり、残暑が厳しく、秋の気配はない。本当に大暑→立秋→処暑と移り変わるのか、疑問に思うような暑さ。

・2020年 8月 11日(火) 晴 27~35℃ 湿度55% 出穂始まる
  10:00~11:00 上の田に水入れ 下の田は水が溜まっている
  ※上の田には、かなりヒエが生えている
・2020年 8月 17日(月) 晴 24~34℃ 湿度70% 
10:00~11:00 出穂が順調 下の田の水が少し少ないので入れる ヒエ伸びる
・2020年 8月 18日(火) 晴 25~32℃ 湿度82%
  10:00~11:00 出穂そろう 
・2020年 8月 24日(月) 晴 32℃ 
  15:00~16:30 草刈り(通り道以外) レーキを忘れ草寄せできず
・2020年 9月 5日(土) 曇り 30℃  土地区画整理総会出席
・2020年 9月 8日(火) 晴  32℃  水抜き
  10:20~10:50 水抜き(土嚢と石を外し、土を被せ注水口を塞ぐ)
 ※昨日は、七十二候で「白露」。台風10号接近。32℃で晴れたが強風が吹き荒れる。
  市内の最大瞬間風速も高く、近くの田んぼの稲は倒伏していた。県内ではビニールハウス被害も報道されていた。
・2020年 9月 10日(木) 曇りのち小雨  30℃  
  14:10~15:40  草刈り(進入路も草刈り。キックバックに注意) 
・2020年 9月 23日(水) 曇り  25℃ 
  10:00~11:30  草刈りとヒエ摘み、田んぼの中の雑草取り
  明日、明後日が雨の予報なので、午前中に草刈り
・2020年 10月 2日(金) 晴  14~27℃ 
  14:30~16:30  草刈り(特にコンバインの進入路)
  ※依頼人の奥さんに、来週の月曜日か火曜日で稲刈りをしてもらうようにお願いする
・2020年 10月 5日(月) 曇り  18~22℃ 
  8:00  依頼人より電話 今日は天気が良くないので、明日10:30から稲刈り予定
  14:30~17:30 四隅刈り(6株×8株で、4カ所+6ヵ所の合計10カ所)
 ※【手刈りをしてわかったこと】
  ・小屋の北側の稲の育ちが一番良い(きちんと水がたまり肥料も効いたかもしれない)
  ・小屋が建っていると、手刈りの面積が広くなり負担が大きくなる
  ・真ん中の畦があると、補植や草刈りの面積が広くなり負担が大きくなる(特に真ん中の畦の斜面は草刈りがしにくく、腰に負担がかかる)
 ※【その対策】
  ①小屋を撤去 ②真ん中の畦を取り、上下の田んぼの段差をなくす

・2020年 10月 6日(火) 晴  13~22℃ 
  8:30~9:30  依頼人夫妻に昼食を届ける 稲刈りの開始時刻を13:30に変更
  13:00~13:30 稲刈りの準備
  13:30~14:30 依頼人によりコンバインで稲刈り
  14:30~15:00 稲刈りの後片づけ
・2020年 10月 8日(木) 雨  19℃
  16:20 依頼人より電話(お米ができたとの電話あり。明日16時以降届けるとのこと)
・2020年 10月 9日(金) 曇り  20℃
  17:15~17:55 お米が届き冷蔵庫に入れる(反収15袋+2kg くず米29kg)
  ※今年は不思議なことにお米がよく乾燥していた乾燥機に入れて10分で終了したとのこと




2020年の稲作の主な作業日程の写真


〇2020年5月13日(水)晴21℃  代かき
〇2020年5月17日(日)曇り18℃  田植え
〇2020年8月11日(火)晴34℃~8月18日(火)晴32℃  出穂(田植えから87~94日目)
〇2020年10月6日(火)晴22℃  稲刈り(田植えから123日目)

〇2020年5月13日(水)晴21℃  代かき


〇2020年5月17日(日)曇り18℃  田植え


〇2020年8月11日(火)晴34℃~8月18日(火)晴32℃  出穂(田植えから87~94日目)


〇2020年10月6日(火)晴22℃  稲刈り(田植えから123日目)


2020年の稲作をふりかえって


2020年7月30日(木)晴30℃ 湿度80%

ようやく梅雨が明けた。今年の梅雨入りは6月10日(水)であった。昨年より、16日も早く、以来、延々と雨空が続いた。今年の梅雨は、6月10日から51日間で、期間中の降水量(速報値)は、松江739.5ミリ(平均409.9ミリ)で、約1.8倍あった。山陰地方は、1.5~2倍ほど上回ったそうだ。
(過去最も遅かったのは、1998年8月3日だそうだ。)
今年は、7月初めに熊本県南部を豪雨が襲い、被害が出た。7月14日、島根県も江の川支流が氾濫し、浸水被害に見舞われた。
日照不足で野菜の生育が悪く、トマト、ホウレンソウは前年比の2倍、キュウリも1.5倍の高値で推移している。
今年は、新型コロナウイルス感染で大変である。
①マスク着用
②手洗い
③「3密の回避」を実践したい。
さらに心配として、熱中症がある。酷暑、炎天下でのマスク着用は息苦しく、長時間は持たない。こまめな水分補給などの対策をして乗り切りたい。

【7月30日の写真と梅雨の明けた翌日7月31日の写真】
2020年 7月 30日(木)に、ようやく梅雨明けたので、翌日7月31日早速、草刈りをした。その前後の写真である


田植え後の水管理


田植え後の水管理についてのポイントをまとめてみた。
〇田植え後、水を更新しない
・苗が隠れるくらい深水しているから。
・水田が藁の分解で還元化して泡が発生する。還元化が激しいと、ドブのようになって根が育たない。それと風下に泡が寄って来て稲にくっ付いて呼吸困難になり、苗が消えてなくなる。

〇水管理
・最初は多少多くてもよいが、3~4日位で活着したら、極浅水(自然落水)で管理する。
・除草剤を撒いたら、4日程度は土が出ないように水を管理する
 この頃から、還元化・表層剥離が発生するので、土が絶対乾かないように浅水管理(除草剤効果が継続)
・還元化が激しくとも除草剤散布後、1週間は落水はしない。
・浅水で雨が降ると還元化が消え、表層剥離も消えるが、好天が続くと復活する。やむを得ない場合は、1日落水してその後は浅水で。

〇土づくり
・最近の土壌診断では、水田土壌の7割以上が鉄不足の傾向にあるようだ。
・良質で安定した稲作栽培には、鉄分の補給と、その他ミネラル等の成分を含んだ「土づくり肥料」による地力の底上げが必要不可欠。
・土壌が還元状態になると、硫化水素が発生する。すると、根に障害を起こし、ごま葉枯病や秋落ちの発生を助長することになる。

田んぼの雑草


・田植え後すぐの初期成育段階では、雑草に栄養を奪われ、稲の生育が阻害されてしまう
・稲作中期以降で稲の丈が伸びて雑草に負けなくなっても、今度は雑草が種を増やして収穫時に混じってしまったり、翌年に雑草が多く生えてきたりする。

ヒエについて


ヒエは、生育初期から稲刈り直前まで稲作で悩まされるイネ科の植物である。姿も稲に似ていて見分けづらいので、とても厄介な雑草である。
ヒエの見分け方は、根本の色であるようだ。ヒエは成長すると根本が赤くなる。その他の見分け方としては、生えている場所と手触り。稲は田植え機で植えるので、均等間隔で生えている。一方、ヒエは、自然に生えたものなので、稲同士の間隔をみて判断できる。また、ヒエは稲に比べて柔らかいので、慣れれば触った感じでも見分けることができる。

対策としては、手で抜くか、鎌で刈り取るか、またはクリンチャーなど、ある程度成長したヒエにも効く除草剤を撒くことくらいである。
・クリンチャーは、日産化学工業 1キロ1700円くらい
 
慣行栽培の田んぼでは、除草剤を散布することだが、無農薬栽培ではチェーン除草と米ぬか除草法を併用して対処できるそうだ。
米ぬかは窒素、リン酸、カリが多く含まれている。かといって加えすぎると、発酵が進み、田んぼから腐敗臭がすることがある(有機酸が発生して稲に悪影響)。
ちなみに米ぬかと同様に米のとぎ汁にも窒素、リン酸、カリが含まれている(家庭菜園では、肥し代わりに米のとぎ汁を与える場合もある)

【除草剤散布のポイント】
・水稲除草剤は圃場の水によって広がり、ゆっくり土壌に吸収され田面に「処理層」を作ることで効果を発揮する。
・上手に除草剤を効かせるポイントを守り。効果的に使用する必要がある。
・田面の凹凸がなくなり、均平となるよう耕起・代かきを丁寧に行なう。
・除草剤使用後7日間は止水し、除草剤が水田外に出ないようにする。
・水口・水尻をしっかり止め、5~7日間は5㎝程度の水深を確保する。
・入水が必要な場合は、ゆるやかに入水する。
・毎年、雑草が問題となる圃場や、代かきから田植えまでの期間が長くなる場合は、「体系処理」を行う。
(『稲作ごよみ』JA全農、2020年、6頁)

≪ヒエの写真≫
今年もヒエには悩むことになった。しかし、除草剤は今年も結局使用しなかった。


【2020年の稲の生長記録の写真】


ここで最後に、2020年の稲の生長記録を写真でたどっておこう。

・2020年4月17日(金)代かき前
 

・2020年4月24日(金)畦塗り終了後 


・2020年5月17日(日) 田植え


・2020年6月14日(日) 分けつが進行中
 
  
・2020年 6月 26日(金) 分けつが進行中


・2020年 7月 10日(金) 分けつが進行中


・2020年 8月 11日(火)~8月 18日(火)出穂が順調


・2020年 9月 4日(金) 稲穂の生長


・2020年 10月 2日(金) 稲穂の熟成


・2020年 10月 5日(月) 四隅刈り


・2020年 10月 6日(火) 稲刈り









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