ショパン:ピアノ協奏曲第1番
ピアノソナタ第2番
ピアノ:サンソン・フランソワ
指揮:ルイ・フレモー
管弦楽:モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団
発売:1967年
LP:東芝音楽工業 AB‐8044
このLPレコードは、フランス出身の名ピアニストであったサンソン・フランソワ(1924年―1970年)が遺した録音の一つで、今でもあらゆるショパンの録音の中でも一際光彩をはなっている名盤である。若い頃のフランソワの演奏を聴くと実に男性的で集中したエネルギーの激しさは、比類ないものであった。同時に瞬間的な閃きで演奏しているような即興的演奏は、ショパンをはじめ、ドビュッシーやラヴェルなど、ラテン系に属する作曲家の作品を演奏させたら右に出るものはいなかったと言っても過言ではないほどの優れたピアニストであった。このLPレコードは、そんなフランソワの若い時代の演奏とは、大きく印象が異なる。ショパン:ピアノ協奏曲第1番の演奏では、抒情的な演奏が印象的で、テンポも比較的ゆっくりと運んでおり、若い時のような一気に弾き切るといった雰囲気はない。その代わり、ショパンがポーランドを離れるに当たり、祖国への愛着と惜別の念を込めて作曲した作品を再現するには、丁度よい抒情味を巧みに再現し、若き日のショパンのほろ苦い感情を巧みに表現することに成功していると言ってよいであろう。ルイ・フレモー指揮モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団も、フランソワのピアノ演奏にピタリと合わせた伴奏ぶりを聴かせている。ショパン:ピアノソナタ第2番は、この曲の持つ暗い情熱を引き出すかのように、フランソワも、一部若き頃のエネルギーを鍵盤に叩き付けるような奏法に変えている。これが、この曲の持つ何とも言えない鬱積した表情を十二分に表現し切って実に見事だ。時折見せる儚い恋心にも似た心情の表現は、フランソワの即興的演奏によってより一層効果的なものになっている。ピアノのサンソン・フランソワは、フランス人の両親の間にドイツで生まれる。1934年一家でニースに戻った時、アルフレッド・コルトーに見出されて1936年にエコールノルマル音楽院に入学、1938年にはパリ音楽院に入学。1943年第1回「ロン=ティボー国際コンクール」で優勝し一躍その名が世界に知られる。ショパン、ドビュッシー、ラヴェルなどを得意としていた。指揮のルイ・フレモー(1921年―2017年)は、フランスの出身。モンテカルロ歌劇場管弦楽団(モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団)の首席指揮者を務めた後、バーミンガム市交響楽団の音楽監督に就任。第二次世界大戦後はシドニー交響楽団の首席指揮者を務めた。(LPC)