ショスタコーヴィッチ:交響曲第5番「革命」
指揮:アンドレ・プレヴィン
管弦楽:シカゴ交響楽団
録音:1977年1月25日、シカゴ
LP:東芝EMI EAC 80405
このLPレコードは、ショスタコーヴィッチの最も有名な交響曲である第5番「革命」を、アンドレ・プレヴィン(1929年―2019年)指揮シカゴ交響楽団が遺した優れた録音である。ショスタコーヴィッチは、この第5交響曲を、1937年(31歳)の時に作曲した。その前年にショスタコーヴィッチは、オペラとバレエを作曲したが、これが当時、旧ソ連の当局に激しく批判され、それを受けて作曲したのがこの曲なのである。初演は、ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルによって1937年10月21日に行われた。この曲がソヴィエト革命20周年に捧げられたこともあり、前年の批判を吹き飛ばす圧倒的な成功を収めることになる。曲は、全部で4楽章からなり、ベートーヴェンの第5交響曲にも似て、苦悩から歓喜と勝利へという、大変分りやすい形をとり、高貴な精神の表現が聴くものを奮い立たせるかのようでもある。しかし、どうもショスタコーヴィッチは、旧ソ連政府の圧力に全面的に屈服したのではない、という説が昔から囁かれている。それは、第4楽章に、虐げられた芸術の真価が時と共に蘇るという内容のプーシキンの詩が引用され、コーダ近くのハープをともなう旋律が静かな抵抗とも取れるというのである。指揮のアンドレ・プレヴィンは、ベルリンのユダヤ系ロシア人の音楽家の家庭に生まれ、1943年にアメリカ合衆国市民権を獲得。当初、ポピュラー音楽を手掛けていたが、その後クラシック音楽に転向したという経歴を持つ。これまで、ヒューストン響音楽監督、ロンドン響首席指揮者、ピッツバーグ響音楽監督、ロサンジェルス・フィル音楽監督、ロイヤル・フィル音楽監督、オスロ・フィル首席指揮者、NHK響首席客演指揮者を務めるなど、指揮者としての経歴は華やかだ。このLPレコードでは、黄金時代のシカゴ交響楽団の能力をフルに発揮させた颯爽とした指揮ぶりに、リスナーは聴いていて爽快感を身を持って感じることができる。ショスタコーヴィッチ:交響曲第5番「革命」を“純音楽的”に楽しめる希有な録音として、現在でもその価値はいささかも失っていない。NHK交響楽団は、アンドレ・プレヴィンの死去の報を受け、2019年3月1日付で「2009年9月、首席客演指揮者に就任したが、東日本大震災直後の2011年3月のN響北米ツアーでは、自らバッハ“G線上のアリア”を演奏することを提案し、日本への痛切な思いを現地の聴衆に音楽を通じて届けた」と哀悼の意を発表した。(LPC)