~ベスト・オブ・ジーリ イタリア歌劇名アリア集~
チレア:歌劇「アルルの女」第2幕より「ありふれた話(フェデリーコの嘆き)」
マスネー:歌劇「マノン」第3幕より「消えされ、やさしいおもかげよ」
マスカーニ:歌劇「ロドレッタ」第3幕より「ああ、あの人を再び小屋の中に」
ヴェルディ:歌劇「トロヴァトーレ」第3幕より「見よ、恐ろしい火を」
ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」第1幕より「なんと可愛い人だ」
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」第2幕より「ああ、マノン、またしてもそむくのか」
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」第3幕より「わたしは兵士だった」
レオンカヴァレロ:歌劇「道化師」第2幕より「もう道化師じゃない」
プッチーニ:歌劇「トスカ」第3幕より「星も光りぬ」
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より
母との別れ「おかあさん、あの酒は強いね」
歌劇「イザボオ」第1幕より ファルコのカンツォーネ「鳩ではなく」
歌劇「イザボオ」第2幕より「活発な姫は現れよう」
テノール:ベニアミーノ・ジーリ
メゾ・ソプラノ:ジュリエッタ・シミオナート(「カヴァレリア・ルスティカーナ」)
発売:1970年
LP:東芝音楽工業 AB・8124
ベニアミーノ・ジーリ(1890年―1957年)は、イタリアのレカナティ出身で、当時一世を風靡した名テノール歌手。ジーリはイタリアのアンコーナ近郊のレカナーティで、オペラファンで靴屋の父のもとに生まれた。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院に学ぶ。1914年パルマで行われた国際声楽コンクールで1等賞に輝く。24歳の時、ポンキエルリの歌劇「ジョコンダ」のエンツィオの役で初舞台を踏み、以後次第にその名を世界に知られるようになって行く。1920年にはアメリカに渡り、メトロポリタン歌劇場で米国デビューを果たし、その後は世界的な名テナーとして活躍。ジーリは、1921年オペラ史上最も有名なテノール歌手の一人であるエンリコ・カルーソー(1873年-1921年)の突然の死のあとの空白を生める歌手となり、すぐに世界的に最も有名なイタリア人テノール歌手となった。このLPレコードは、そんなジーリのオペラアリア集であり、その柔らかく、よく通る歌声を堪能することができ、古きオペラファンには何とも懐かしい、またとない贈り物となっている。「ありふれた話(フェデリーコの嘆き)」は、婚礼の夜、花嫁の不実を知ったフェデリーコが裏切られた悲しみを歌う悲痛なアリア。「消えされ、やさしいおもかげよ」は、アベ・プレヴォーの名作「マノン・レスコー」を素材にオペラ化した作品で、デ・グリューのアリア。「ああ、あの人を再び小屋の中に」は、ヴィダの童話「二つの小さな木靴」に基づいた3幕物のオペラの第3幕で美しい恋の回想と烈しい胸のたぎりを歌う。「見よ、恐ろしい火を」は、吟遊詩人マンリコの激情的なカバレッタ。「なんと可愛い人だ」は、若い農夫ネモリーノが歌う美しいカヴァティーナ。「ああ、マノン、またしてもそむくのか」は、心をこめたアリアで、聴くものの心を打たずにおかない。「わたしは兵士だった」は、激しい怒りを美しい旋律のせて歌われる。「もう道化師じゃない」は、芝居と現実のへだてを忘れて叫ぶ激しいアリア。「星も光りぬ」は、死刑を前にして歌う歌う詩人カヴァラドッシの劇的なアリア。「おかあさん、あの酒は強いね」は、酒に酔った真似をして、それとなく別れを告げる悲痛な歌。「鳩ではなく」は、鷹を呼び、腕にとまらせながら姫の問いに答える場面で歌われる。「活発な姫は現れよう」は、イザボオが馬に乗って人気のない街路を通り過ぎるのをみつめ、その通路に花をなげつつ歌う。これらのアリアを歌うジーリの歌声は、かくも麗しくも、輝かしく響くのであろうか。典型的な甘美なベル・カントのジーリが歌うこのLPレコードのアリアを聴いていると、誰もが熱烈なオペラファンになってしまいそうだし、何よりも心の底から、“クラシック音楽っていいなあ”と感じさせてくれるのである。(LPC)