ルーセル:交響曲第3番/第4番
指揮:アンドレ・クリュイタンス
管弦楽:パリ音楽院管弦楽団
LP:東芝音楽工業 AA‐7595
アルベール・ルーセル(1869年―1937年)は、最初は印象主義の作風から始まり、その後新古典主義の作品を作曲するに至ったフランスの作曲家。当時、ラヴェルとともにフランス楽壇の重鎮として活躍した。ルーセルは、海軍に入り軍艦の経験を積む。1894年に海軍を退くと、パリで音楽の道を志し、ダンディなどに師事。ルーセルの作風は、初期作品は印象主義音楽に影響を受けたが、もともとは古典主義者であった。同時代のドビュッシーやラヴェル、サティの作風とルーセルとの作風の違いは、その強烈なリズム感と重厚なオーケストレーションにある。ラヴェルと同じようにルーセルもジャズにも興味があったようで、「夜のジャズ」という歌曲を残している。日本においては、同時代のフランスを代表する作曲家のフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルに比べ、ルーセルの認知度は必ずしも高いとはいえない。これは、強固な構成と形式美を追い求めるルーセルの音楽は、フランス音楽独特得の雰囲気とは少々異なるところに原因があるのではないかと推察される。フランス音楽は、繊細さを追究する反面で、強烈な主張を持った音楽も存在する。つまり、フランスにおいてはルーセルの音楽もまた、フランス音楽そのものなのだ。このLPレコードには、交響曲第3番/第4番が収録されている。第3番は、ダイナミックで強烈なリズムを持った交響曲であり、そのエネルギッシュさが特に印象に残る。第4番も基本的には第3番と似たような作風の曲であるが、第3番には無かった平穏さも持ち合わせ、一回り大きな印象を受ける。これら2曲の交響曲は、現在ではフランクやサンーサーンスの交響曲と並び、フランスを代表する交響曲に位置づけられている。さらに、このルーセルの2曲の交響曲は、この後につづくオネゲル、ミヨー、リヴィエ、デュティユーなどに大きな影響を与えたといわれているほど、重要な作品と言える。このLPレコードでは、フランス出身の名指揮者アンドレ・クリュイタンス(1905年―1967年)とパリ音楽院管弦楽団(パリ管弦楽団の前身)の演奏で、ルーセル独特の世界が思う存分繰り広げられる。第3番の演奏は、激しいリズムと奥深いオーケストラの音色が巧みに取り込まれ演出され、そのエネルギッシュさに圧倒される思いがする。第4番は、第3番とは異なり、優美な側面を間に挟みながら曲が展開される。このため、第3番ほど強烈な印象は与えないが、深みのあるオーケストレーションが、よりスケールの大きな交響曲としている。(LPC)