グリーグ:抒情小曲集
第1集 作品12 第2番:ワルツ
第2集 作品38 第1番:子守唄
第3集 作品43 第1番:ちょうちょう
第3集 作品43 第2番:孤独なさすらい人
第3集 作品43 第3番:ふるさとで
第3集 作品43 第4番:小鳥
第3集 作品43 第5番:恋の曲
第3集 作品43 第6番:春に
第4集 作品47 第2番:音楽帖
第4集 作品47 第3番:メロディー
第4集 作品47 第4番:ハウリング
第5集 作品54 第4番:夜想曲
第5集 作品54 第6番:鐘の音
第6集 作品57 第6番:郷愁
第7集 作品62 第3番:フランスのセレナード
第7集 作品62 第5番:まぼろし
第7集 作品62 第6番:家路
第8集 作品65 第1番:青春の日々から
第8集 作品65 第2番:農夫の歌
第8集 作品65 第6番:トロルドハウゲンの婚礼の日
第9集 作品68 第5番:ゆりかごの歌
ピアノ:ワルター・ギーゼキング
LP:東芝EMI AB-8131
このLPレコードでピアノ演奏しているのは、ドイツの名ピアニストのワルター・ギーゼキング(1895年ー1956年)である。ドイツ人といっても、ギーゼキングはドイツ人の両親のもと、フランスのリヨンに生まれた。このことが影響しているのか、ドイツ人ピアニストに多くみられる、ドイツ・オーストリア系作曲家への偏重はなく、例えば、ドビュッシーを弾けば、フランスのピアニストを凌ぐセンスを発揮する。ギーゼキングは、ラフマニノフのピアノ協奏曲を最初に録音したピアニストでもあり、この時、ラフマニノフと変わらぬテクニックで弾きこなしたというように、技巧的にも完璧な域に達していたピアニストであった。これらの前提にあるのは、ギーゼキングに対する“新即物主義”のピアニストという評価だ。“新即物主義”とは、それまでのロマン主義に根差したピアニストの恣意的な演奏表現とは異なり、あくまで楽譜に忠実に演奏する奏法を指す。このため、ドイツものだろうが、フランスものだろうが、ギーゼキングにとっては同じピアノ曲に映っていたのであろう。ただこれだけなら、別にそう驚くことはないかもしれないが、ギーゼキングの“新即物主義”的演奏は、同時に人間臭さも持ち合わせているところが、凡庸なピアニストとは大いに異なる。ただ機械的にピアノ演奏しているのでなく、何回も聴くうちに、ギーゼキングの息遣いまでもが聴き取れるのではないか、と思えるほど人間臭い演奏内容なのだ。その意味で、このLPレコードでギーゼキングが演奏しているグリーグ:抒情小曲集は、ギーゼキングの演奏の特徴が最も発揮された曲の一つであると言ってよかろう。実際、このLPレコードを聴き終えると、もう一度最初から聴き直したくなるほど完成度が高い録音に仕上がっている。言い表しがたい何ものかがあって、リスナーの心を捉えて離さないのだ。要するに、このLPレコードは、グリーグが北欧の自然を背景に、抒情味いっぱい書き上げた「抒情小曲集」に対する、ギーゼキングの共感で溢れかえったような演奏内容となっている魅力あふれるものなのだ。グリーグの「抒情小曲集」は、1867年から1903年にかけて作曲された、全66曲、全10集からなるからなるピアノ曲集。誰でも一度は聴いたことのある「蝶々」「春に寄す」「トロルドハウゲンの婚礼の日」などが含まれている。グリーグは、北欧を代表する作曲家としてその名は後期ロマン派の中でも、ひと際光り輝いている。ピアノ曲の中では、「ピアノ協奏曲」そしてこの「叙情小曲集」などがある。(LPC)