グラナドス:スペイン舞曲集全曲
第1番
第2番「オリエンタル」
第3番
第4番「ビリャネスカ」
第5番「アンダルーサ」
第6番「アラゴネーサ」
第7番「バレンシアーナ」
第8番
第9番
第10番
第11番
第12番
ピアノ:アリシア・デ・ラローチャ
発売:1981年
LP:ビクター音楽産業 VIC‐5263
エンリケ・グラナドス(1867年―1916年)はスペインを代表する作曲家である。20歳代の中頃、このスペイン舞曲集を作曲した。代表作であるオペラ「ゴイェスカス」の初演に立ち会うため、1916年にニューヨークに行ったが、その帰りに乗った英国船がドイツ海軍の潜水艦による魚雷攻撃を受け、帰らぬ人となってしまった。49歳という作曲家として正に脂の乗り切った時に命を落としたことは誠に残念なことではあった。グラナドスは“スペインのショパン”とか“スペインのシューベルト”などと言われることがあるが、出世作となったこのスペイン舞曲集を聴くと、微妙なリズム感と陰影のあるメロディーとが交差して、誰も真似できない独特の世界を創造していることが聴いて取れる。第1曲 ミュート(メヌエット)、第2曲 オリエンタル(4分の3拍子で書かれた作品)、第3曲 サラバンダ(サラバンド:3拍子による荘重な舞曲)、第4曲 ビリャネスカ(田園的気分の鄙唄)、第5曲 アンダルーサ(アンダルシア舞曲)第6曲 ホタ(スペイン北部の民俗舞踊および民謡)、第7曲 バレンシアーナ(またはカレセーラ:粋な優雅さが溢れた曲)、第8曲 アストゥリアーナ(アストゥリアス舞曲:4分の3拍子のコーダの付いた3部形式)、第9曲 マスルカ(マズルカ)、第10曲 ダンサ・トリステ(悲しい舞曲)、第11曲 サンブラ(イスラム文化の名残りを濃く引き継ぐ舞曲)、第12曲 アラベスカ(アラビア風舞曲)。ここで演奏しているのがスペインの宝とでも言うべき名ピアニストであったアリシア・デ・ラローチャ(1923年―2009年)である。バルセロナに生まれ、グラナドスの愛弟子であったフランク・マーシャルに師事し、5歳で初舞台を踏んでいる。アルベニスやグラナドス、ファリャ、モンポウといった、19世紀から20世紀のスペインのピアノ曲の専門家として有名であったが、モーツァルトとかシューベルト、シューマンなどを弾かせても、当時彼女の右に出るものはいなかった。独特のリズム感に貫かれた冴えたそのタッチは、今聴いても誰も達し得なかった高みに達していたことを窺わせる。そのアリシア・デ・ラローチャが母国スペインを代表する作曲家グラナドスのスペイン舞曲集を弾いたこのLPレコードは、記念碑的録音であり、永久保存盤とでも言っもいいものだ。ここでもラローチャは、冴えたタッチと独特のリズム感でグラナドスの世界をものの見事に描き切っている。(LPC)