私は毎日フネを見て、見るたびに、人間がガンになる動転ぶりと比べた。ほとんど一日中見ているから、一日中人間の死にかたを考えた。考えるたびに粛然とした。私はこの小さな畜生に劣る。この小さな生き物の、生き物の宿命である死をそのまま受け入れている目にひるんだ。その静寂さの前に恥じた。
私がフネだったら、わめいてうめいて、その苦痛をのろうに違いなかった。
私はフネのように死にたいと思った。
佐野さんは永くともに過ごした猫との別れをこう記した。
私がこれまでに見送った生き物たちに感じた思いがそのまま書かれていて胸がつまった。
私も思う。
犬も猫も鳥も、その他どんな生き物も、人間はその本質の強さにおいて彼らにかなわない。
彼らが静かに死を受け入れて命を終えるたびに、私も自分を恥じるばかりなのだ。