村の朝の、なんともおだやかでさわやかなこと、それはとてもことばではいいあらわせません。母は、夜明けとともに起きました。わたしもいっしょに起きました。母がいちばんさきにするのは、家じゅうの窓という窓、戸という戸を開け放つことです。
母はいつもいっていました。「風の神さまと、太陽の神さまが、毎朝、うちを訪ねてくる最初のお客さまでなきゃならないのよ。すずしい風と、金色の光を運んできてくださるんだからね」と。わたしは、庭のオレンジの木のわきにあるベランダの段々にすわって、神さまのおいでを待ちました。明け方のうすあかりが、村全体に、そうっとやさしくしのびよってくる様子は、はずかしそうにしている村の美しい花嫁を思わせました。
素朴な挿絵とともに、スリランカの小さな村の暮らしが生き生きと目の前に立ち現れてくる。豊かで穏やかで、安心した暮らし。ここから遠い世界の美しい日常。
語り手と一緒に自分もそこにいるような、そんな気分になる楽しい一冊だった。