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『近代秀歌』に歌人クラブ評論賞

2015-04-20 09:12:01 | 歌う

             ☀ 『近代秀歌』に歌人クラブ評論賞 ☀

 私の大切な岩波新書・『近代秀歌』が歌人クラブ評論賞を受賞した。著者は朝日歌壇でおなじみの永田和宏。「これだけは知っておいて欲しい近代秀歌」を100首採りあげて解説、というより著者が読者に分かりやすく話しかけてくれる本である。

 ✿ うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山桜花  若山牧水

 短歌を始めてから私の春先は忙しくなった。さくら、さくらに振り回される。全国の桜の名所
をかなり訪れたが、吉野の山桜がベストだ。この著書で永田和宏は若山牧水の山桜の歌を抄出し、次のように私に話しかける。~若山牧水には、わけても山桜の歌が多い。現在街中でみかける桜のほとんどは染井吉野であるが、これは江戸時代以降に主流になった桜であり、もとは桜と言えば山桜であった。古くはそれを山桜とあえて言うことはなかったが、いかにも痴呆的に豪華に咲く染井吉野より、私自身は山桜が好きである。

 染井吉野は花が咲いた後から葉が出る、ときには花と共に葉が出るのが疎ましい。山桜の葉は花とほぼ同時に開く、薄紅色の幼葉は花のようだ、花と共に葉も咲いているのだ。
永田和宏が染井吉野より山桜が好きとはうれしい。「わたしも山桜の方が好き」と呟く。

 「西洋人には虫の音は、聞こえていないという。虫の音が美しいと感じるのは、脳の情報処理能力の問題であるとともに、日本人に刷り込まれてきた感性のゆえであり、そのような感性は、古典和歌以来の日本の詩歌によって形成されてきた部分が小さくない」。『近代秀歌』の第1頁の著者の言葉である。さらに「私たちが花を見て美しいと感嘆するのは、私たちの心の奥深くに刷りこまれてきた、花を詠った歌の数々によって、美しいと感じる感性がおのずから形成されるからなのだ」 、略  「そのような私たち日本人の感性の基盤を形成してきた<歌>について、私とあなたとで話ができるだろうか。してみたい、と思う」

   永田先生   この本をひらいて先生としばしばお話させていただいてますの。

                        4月20日   松井多絵子