三月、うふふふふ
♦ 古い手帳をネガフイルムを捨てるなら空っ風吹く今日こそよけれ 松井多絵子
今日から3月、春が始まる。朝の陽射しが眩しい。晴天だが風が強いだろうと天気予報は。
3月1日 <折々のことば>
✿ 三月の甘納豆のうふふふふ 坪内稔典
俳句は日常の断片を事細かに説明するのではなく、刷毛で履くようにさっと描く。そして、すっと一息でつぶやける、そんな口のなじみを大事にする。甘納豆をほおばりながら、長かった冬の厳しさが終わり春はもうすぐそこ、と思うと、自然に顔がほころんでくる。それだけでいい、いや、それがいい。そのことをだれに憚ることもなくもらす、ことばによる一筆書きの世界。 鷲田清一
坪内稔典は俳人、「船団の会」代表。1944年生まれ。遊びごころのある俳句が多く、意味はわからないが、その句は色々に想像できて面白く、楽しい。例えば稔典のこんな句も、、。
✿ 春の風ルンルンけんけんあんぽんたん
これは、子供のオシャベリじゃないか。これが俳句なら私だってできる。などと思ったらとんでもない。これほど自在に春風を詠めるのは親密に俳句と付き合ってきたからだ。
✿ 魚くさい路地のひだまり母縮む
おそらく母は高齢者であろう。ひだまりに立つ母が小柄なのに驚く。長年の苦労が母を圧縮してしまったのか。「魚くさい路地」には庶民の生活の臭いが満ちている。
深く、深く、ソファーにからだを沈ませて我はぶくぶくふわふわぷつん
3月1日 松井多絵子