漱石の「夢十夜」
「夢十夜」は1908年7月25日から8月5日まで、10回にわたって朝日新聞に連載されたそうである。物語は時空を飛び越え、ふしぎな世界に読者を誘う。この9日から朝日朝刊に再連載される。漱石が眠っているときに見たり聞いたり試したりしたことを覗くことができるか。100年も前の夢はまだ色褪せていないだろうか。 次の歌はわたしの夢10首である。
わたしの「夢十首」 松井多絵子
あかときの夢に会う人どのひとも髪には蝶が羽をひろげて
ひさびさに亡き父ゆめに現れて「やあ」と手をあげ消えてしまいぬ
二分咲きのさくらの道にて朝夢に出会いし父にまた会えるかも
押さえても押さえても髪は舞い上がる、夢の道には風は吹かない
絵のなかへ入ってゆきます足音に風車の夢を覚まさぬように
西日さす古代室にて見ておりぬ夢よりさめぬ遺跡の壺は
シャーペンを握れど何も書けぬまま夢の机の微かな圧力
あかぎれの手にしなやかな緩やかな白きスロープ、夢の白猫
足音のわれに近づく夢の闇だれか分からぬままに過ぎ行く
夢の出口に来てふりむけば彼方には青ひと色の火星の夕焼け
今朝の夢は思い出せません。目覚めたら、だらりだらりと 雨が、雨が、
、。 3月7日 松井多絵子