えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

臆病な目と鬼の手

2016-03-09 12:27:37 | 歌う

              ・・・ 臆病な目と鬼の手 ・・・

 あれから5年、楽しい5年はあっという間に過ぎる。しかし辛い5年はさぞ長い日々だったであろう。 1月21日の鷲田清一✿「折々のことば」が切実になる。今日は3月10日、

 ♥ 目は臆病 手は鬼   三陸地方に伝わることば

 気仙沼のある魚問屋でのこと。大にぎわいの宴席のあと、下げた食器の山を見てため息をついていると、一家の母がこう言ったという。途方もない量の片付け仕事を前に怖じけているときも、とりあえず手を動かせば存外すんなり事はなる。震災後、すさまじい瓦礫の山を前にしてボランティアの人たちがこの言葉を立証した。「斉吉魚問屋便り」(2013年2月)

                海の怒り 五首   松井多絵子

       トラックも流れる家もわれの手が掴めそうなりテレビへ寄りゆく

       十メートルの津波をおもう電柱の高さの津波の迫りて来るを

       海近き二階の家のその屋根に乗り上げし船には人影あらぬ

       海の怒りの鎮まりしのち親を子を瓦礫のなかに探すひとびと

       はつ夏の高田松原あの昼の海はおっとりしていたけれど

  

  ☀朝刊 福島原発事故避難住民に共同調査 「帰れないと思う」 38% 
 今の気持ちは 「がんばろうと思う」と答えたひとは32%に減り 「怒りが収まらない」は前回の調査よりふえて18%である。

                  3月10日  松井多絵子                

                      


都心は春のベール

2016-03-09 09:55:31 | 歌う

              ~ 都心は春のベール ~

 春の訪れを告げる霧やもやが8日、全国の広い範囲を包んだらしい。関東や東北で濃霧注意報が出され、羽田空港では欠航が相次いだ。東京・築地市場の周辺ではビルがかすみ、幻想的な朝となった。気象丁によると、7日の雨で湿度が上昇した後、放射冷却で気温が下がって発生した。関東各地では午後気温が20度を越える見込みだと昨日☀夕刊は報じている。

 霧は微小な浮遊水滴によるが視程が1キロ未満の状態、もやは湿った微粒子により視界が1キロ以上。平安以後秋のものが霧、春のものが かすみ 短歌では近藤芳美の代表歌に次のような1首がある。相手と自分を隔ててしまったのは霧、愛誦されている相聞歌だ。

 ♥ たちまちに君の姿を霧とざし或る楽章をわれは思ひき  近藤芳美

     このほかにも次のような「霧の歌」がよく知られている。

 ♥ マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや  寺山修司

 ♥ 月山は霧におぼれてゐたるのみみちのく声の男(を)の背も見えぬ 馬場あき子

 ♥ 白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり  高野公彦

              ※      ※      ※

 昨日の霧のため東京羽田空港は、今日も遅延、欠航が続いているそうである。都心に競いあうビルの凹凸は霧のベールで和らぎ、少しやさしい東京になった。でも人の移動には支障をきたす、羽田空港よ、霧に溺れないでくださいね。

                      3月9日  松井多絵子