えくぼ

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金原ひとみの「軽薄」

2016-03-06 09:52:43 | 歌う

              ・・・ 金原ひとみの「軽薄」 ・・・

 ♥ ひと筋の彼への道がつづいてる体のどこかに彼への道が    松井多絵子

 3月6日、今日は日曜、新聞は本の広告のラッシュだ。そのなかでも目立つのが金原ひとみ✿「軽薄」 ~軽薄の上に築き上げたすべてを差し出だろう~ 著者が開きなおっている。20歳のとき芥川賞を受賞、「蛇にピアス」という受賞作を私は読んだがグロテスクでうんざりした。同時に受賞した綿矢りさの「蹴りたい背中」はいかにも才女の作品、今後の二人どうなるか。

 「あなたは軽薄ですね」と言われたら傷つく。思慮が浅く言動に誠実さが感じられない。アナタとは関わりたくないと婉曲に言われているように思えてしまう。「軽薄」とは淋しい言葉だ。しかし小説には「淋しさ」こそなによりのテーマではないか。金原ひとみは翻訳家、児童文学研究家で法政大学教授・金原瑞人の娘である。小学校6年のとき家族で1年間アメリカで暮らした。日本人学校へはほとんど行かず、家で日本の本を読んでいたそうである。

 渾身の長編小説 ✿ 軽薄  裕福な夫と幼い息子、充実した仕事を手に、満たされた日々を送っていたカナ。アメリカから帰国した未成年の甥との破滅的関係は、彼らと彼らを取り巻く人々をどこへ運ぶのか。 空虚の果てにある一筋の希望を描く。ヒロインのカナはスタイリストとして活躍している29歳、不倫の相手が19歳の甥とは異常だ。しかし年下の青年との不倫ならよくある話。19歳の甥だから小説になるのだろう。次々に小説が刊行される今、よくあるお話 では注目されず、本は売れない。著者も読者も異常になってゆくのだろうか。

                        3月6日  松井多絵子