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【名将に武勲なし】№1122
矢沢永一氏の心に響く言葉より…
最近、銀行強盗が流行っている。
強盗が入ってきて、それを勇敢な社員が捕まえた。
それは実に立派なことだと、その社員は表彰された。
しかし、はたしてそれが本当に喜ぶべきことでしょうか。
銀行強盗に入るには、たいてい下見に入っている。
その銀行の守りが堅固だったら、強盗は「これはダメだ」と思って、おそらく諦めるだろう。
その結果として、銀行は無事である。
そのように持っていける支店長が、実は最高の存在なのです。
「故(ゆえ)に善く戦う者の勝や、智名無く」
どんな会社でもそうです。
実際、その人が会社を支えているような立派な人がいるものですが、その人は持て囃(はや)されない。
一方に、パフォーマンスが好きな社員がいて、そんな類のことを喜んでやる。
世間ではみんな「彼は優れている」と言うけれども、本当は優れているのではない。
むしろ目立たないところに、優れた人物がいるのだということです。
企業であれ、学校であれ、どこにでもそういう人がいますね。
勝って当たり前のような勝ち方をしているから、目につかないということで、大石蔵助がまさにその標本です。
「戦争の上手な人が勝っても、その智謀が優れているという評判もなければ、武勇による功績もありません」
というのは、つまり目につきやすい功績は、真の功績にあらずということです。
勝つか負けるか予断を許さないというような、鍔迫(つばぜ)り合いの決戦に持ち込んで、奮闘のすえ辛うじて勝ったという場合、その指揮者を名将と言えるか、という問題があります。
応えは、否、です。
本来あるべき名将は、事態をそのような危機に持ち込む以前に、敵が戦いを挑(いど)んでくる余地のない情勢をつくりあげるでしょう。
だから、名将に赫々(かくかく)の武勲(ぶくん)なし、というのです。
『孫子・勝つために何をすべきか』“矢沢永一・渡部昇一”PHP文庫
戦国時代の剣豪の塚原卜伝(ぼくでん)に次のような話がある。
ト伝が船に乗っているとき、途中から若い武芸者が乗ってきた。
武芸者は、高名なト伝が乗っていると知るや、決闘を申し込んだ。
ト伝は、のらりくらりとかわしていたが、ト伝が臆病風に吹かれたと思った武芸者は、ますます図に乗って挑発した。
まわりの乗客の迷惑になるの気にしたト伝は、仕方なく、近くの小島で決闘することに同意する。
船が小島に着き、先にその武芸者を降ろしたト伝は、船頭から受け取った棹で陸地を一突きして、さっさと島から船を出した。
一人、小島に残された武芸者は大声で罵ったが、ト伝は「戦わずして勝つ」と言ったという。
「匹夫(ひっぷ)の勇(ゆう)」という言葉がある。
思慮が浅く、ただ血気にはやってがむしゃらに行動するような、つまらない勇気のことを言う。
自分に相当自信がある人は、往々にして、目立つことや、派手なことを好む。
本当は、世の中には、上には上があるのだが、それを知らずして、己の力を誇示する人は恥ずかしい。
真に実力のある人は、戦わずして勝つことを目指す。
「名将に武勲(ぶくん)なし」
目立たず、褒められることもないのが、真の実力者だ。
□□□□□□□□
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矢沢永一氏の心に響く言葉より…
最近、銀行強盗が流行っている。
強盗が入ってきて、それを勇敢な社員が捕まえた。
それは実に立派なことだと、その社員は表彰された。
しかし、はたしてそれが本当に喜ぶべきことでしょうか。
銀行強盗に入るには、たいてい下見に入っている。
その銀行の守りが堅固だったら、強盗は「これはダメだ」と思って、おそらく諦めるだろう。
その結果として、銀行は無事である。
そのように持っていける支店長が、実は最高の存在なのです。
「故(ゆえ)に善く戦う者の勝や、智名無く」
どんな会社でもそうです。
実際、その人が会社を支えているような立派な人がいるものですが、その人は持て囃(はや)されない。
一方に、パフォーマンスが好きな社員がいて、そんな類のことを喜んでやる。
世間ではみんな「彼は優れている」と言うけれども、本当は優れているのではない。
むしろ目立たないところに、優れた人物がいるのだということです。
企業であれ、学校であれ、どこにでもそういう人がいますね。
勝って当たり前のような勝ち方をしているから、目につかないということで、大石蔵助がまさにその標本です。
「戦争の上手な人が勝っても、その智謀が優れているという評判もなければ、武勇による功績もありません」
というのは、つまり目につきやすい功績は、真の功績にあらずということです。
勝つか負けるか予断を許さないというような、鍔迫(つばぜ)り合いの決戦に持ち込んで、奮闘のすえ辛うじて勝ったという場合、その指揮者を名将と言えるか、という問題があります。
応えは、否、です。
本来あるべき名将は、事態をそのような危機に持ち込む以前に、敵が戦いを挑(いど)んでくる余地のない情勢をつくりあげるでしょう。
だから、名将に赫々(かくかく)の武勲(ぶくん)なし、というのです。
『孫子・勝つために何をすべきか』“矢沢永一・渡部昇一”PHP文庫
戦国時代の剣豪の塚原卜伝(ぼくでん)に次のような話がある。
ト伝が船に乗っているとき、途中から若い武芸者が乗ってきた。
武芸者は、高名なト伝が乗っていると知るや、決闘を申し込んだ。
ト伝は、のらりくらりとかわしていたが、ト伝が臆病風に吹かれたと思った武芸者は、ますます図に乗って挑発した。
まわりの乗客の迷惑になるの気にしたト伝は、仕方なく、近くの小島で決闘することに同意する。
船が小島に着き、先にその武芸者を降ろしたト伝は、船頭から受け取った棹で陸地を一突きして、さっさと島から船を出した。
一人、小島に残された武芸者は大声で罵ったが、ト伝は「戦わずして勝つ」と言ったという。
「匹夫(ひっぷ)の勇(ゆう)」という言葉がある。
思慮が浅く、ただ血気にはやってがむしゃらに行動するような、つまらない勇気のことを言う。
自分に相当自信がある人は、往々にして、目立つことや、派手なことを好む。
本当は、世の中には、上には上があるのだが、それを知らずして、己の力を誇示する人は恥ずかしい。
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