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飢饉普請(ききんぶしん) 人の心に灯をともす 548より

2011年02月23日 | うたしやきなお話

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【飢饉普請(ききんぶしん)】№548


坂本啓一氏の心に響く言葉より…


日本の商人道を確立したといわれる近江商人には「飢饉普請(ききんぶしん)」という言葉があります。

飢饉、つまり、その年の収穫が不作で、近隣農家が困っていたら、普請しなさい、ということです。

普請して、農家の人に働いてもらい、賃金を出しなさい。

お金を貯めるばかりではなく、飢饉のときこそ、出し惜しみすることなく使いなさい。

できるだけ長く働いてもらいなさい。


阪神・淡路大震災直後、ラーメン一杯5000円で売ったお店がありました。

同じとき、幸いにも自宅のガスや水は早く復旧したので、お風呂をご近所に開放した会社社長がいました。

社長の名前が「川上さん」と言ったので、「川上湯」とみんなに呼ばれ、感謝されていました。


さて、街が復興した後、くだんのラーメン店は倒産してしまいました。

一杯5000円で得た利益はどこにも残らなかったわけです。

一方、川上社長の会社は、震災前に比べ、10年後の現在、売上、利益共に5倍に成長しています。

社長を後進に譲り、自らは近隣のボランティア活動に忙しい毎日を送っておられます。

『気づいた人はうまくいく!』日本経済新聞出版社



以前、新潟市の北方(ほっぽう)文化博物館というところに行ったことがある。

ここは、江戸時代から昭和にかけ、新潟一の大地主であり、豪農だった伊藤家を博物館としたものだ。

全盛期に所有していた土地が、1300ヘクタールというから、東京ドーム300個分の広さだ。

伊藤家には、良寛和尚を始めとして、明治維新で活躍した勝海舟や山岡鉄舟、西郷隆盛、伊藤博文らの書が所蔵され、当時のそうそうたる人物が訪れたという。


伊藤家は、飢饉のときには、近隣の困っている農民を集め、自宅の庭に穴を掘ったり、築山を造ったり、また埋めたりという工事をさせ、仕事に出さえすれば誰にでも賃金を支払った。

ただお金を配るのではなく、仕事をさせて農民を救ったのだ。

伊藤家の家訓に、「田地買うなら精々悪田を選び、悪田を美田にして小作に返すべし」というものがあるが、そこには小作人を大事にする、という気持ちがこめられている。


誰もが途方にくれる震災や、天災に出会ったとき、商人の本当の値打ちがわかる。

一時の利益に目がくらみ、他人の不幸につけいり、小さな儲けを得ようとするものは、後に必ず衰退している。

反対に、困っているときはお互い様、と自分の損得を考えずに助けた者は、のちのちまで隆々として繁栄している。


皆が困っているときは、飢饉普請までは出来ないにしても、せめて損得は考えずに人のお役に立ちたい。



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