山際経済再生担当大臣が辞任に追い込まれました。その理由は「旧統一教会」との付き合いがあったにも拘わらず、週刊誌などで暴露されると、渋々認めるという「後だしじゃんけん」の姿勢が酷くて、選挙に強かった安倍さんの遺産である岸田内閣が支えきれなくなった(切り捨てた)からであります。内閣改造の時に、統一教会と関係があった大臣はみんなやめさせられ「アンケート」を出させて、篩にかけたのに、山際さんは「しらばっくれた」のです。
そもそもは、故安部元首相が路上で選挙応援中に狙撃されたことがきっかけでありました。統一教会の信者を親に持った山上容疑者が、その献金のために次々と親族を失い、生活力を奪われて家族崩壊を招いたことを世間に知らしめる「計画的にして最大効果をもたらした襲撃」であったのです。
数十年前からその「霊感商法」が問題視されていたにもかかわらず、存続を許し放置したのが安倍一族と統一教会の深い関係に根差していたことが明るみに出ました。検察や文科省など、それを知っていて見て見ぬふりをし、宗教の自由を隠れ蓑にする詐欺集団・半日団体を温存したのが原因でもあります。
安倍さん亡き後、その「負の遺産」が自民党政権を揺るがすことになろうとは本人も思わなかったでしょう。政治家一家の名門のボンボンであった彼は、自分の足元・立場や権力さえ保てれば日本がどうであろうが、政治や社会の将来がどこに向かおうが知ったことでは無かったのです。
さて安倍政権が残したもう一つの負の遺産が「アベノミクス」であります。自民党政治を盲信する支持者やマスメディアの自民シンパの先生方は、いまだに安倍政治のおかげで日本の政治と社会が安定し、経済も上昇し、雇用が改善したと思っているようです。
しかし現実は、正規雇用は減少して非正規雇用者が増え、主婦や老人は安い給料で働かされ、年金などは実質減額されています。株が上がったと言っていましたが、円安誘導によって外貨建ての株価が膨らんで見えたに過ぎません。安倍政権は、財政の規律を破り実質0金利の継続によって低利での国債発行を無制限に増やして莫大な負債を残しました。その引き受け手が日銀なので、日銀券をどんどん増刷します。すると、現金がじゃぶじゃぶ国内に流れていくので、相対的に諸物価が上がる要因になります。
ロシアのウクライナ侵攻による悪影響で、天然ガスと原油の供給が大幅に減ったこと、ウクライナが提供してきた小麦などの農産物の生産停止などによって、様々なコスト上昇要因が増えました。そのため、世界的な物価高騰に進んできたのです。各国政府や中央銀行が、流通する現預金・マネーサプライ(流動性)を減らし長期金利を上げて、インフレ抑制に走ります。
ところが、超低金利のままであった日本との金利差がが大きく開いてきて、円が売られ(円安となる)ています。これを例えれば、貧しい後進国の独裁国家があったとして、軍隊や役人の維持のための支払いや、自らの私財を蓄えるために自国のお札をバンバン刷って発行したら、国際的な信用がなくなり、通貨を外貨に交換して貰えなくなります。結果として猛烈な物価高騰を招く(ハイパーインフレ)ことになり、給料が追いつかない国民は、お札の束を抱えてパンを買う行列に並ぶことになるのです。
世界的な物価高騰・インフレ経済に陥った時、日本(日銀)は打つ手がなく円安・物価高に対抗出来る手段を失っているのです。今月になって2回、日銀が円買いという為替介入をしたようです。一度は公開し、先日は「ステルス(非公開)」で市場介入し、円高誘導を行ったのです。残念ながら、そのために活用できる外貨準備高は20兆円程度で、世界全体で動かされる資金からみたらほんのわずかであります。介入は、一時的限界的な効果にとどまりすぐに円安に戻ってしまうのです。小手先ではどうにもならない悪夢のような構造に落ちた政策が「アベノミクス」の正体でありました。
安倍さんは現役総理の時に「悪夢の様な民主党政権」が口癖でありました。民主党時代に維持した「円高」を悪者扱いし、輸出が伸びないのは円高のせいだと主張したのです。しかし、それはその一部の要素に過ぎず産業構造の変革が置き去りにされることにもなりました。
今、本来なら長期金利の引き上げを実施すべきなのです。しかし、今年度末には1000兆円を超える ことが確実な国債残高であります。仮に1%上げたら、長期的に見れば年間で10兆円の利息負担増となります。これをまた国債で補うならその残高は雪だるま式に増えていくでしょう。低金利の恩恵で生き延びてきた中小、借金まみれの企業は、次々に倒産に追い込まれるでしょう。変動金利型の住宅ローンで身の丈以上に多額な借金を負った債務者は、返済不能に陥り持ち家を手放すことになります。
だから日銀は「金利を上げられない」ので、円安に対抗できる術がないのであります。結果、皆さんの運転する車のガソリン代は上がり電気代は上がり、パンもパスタもなにもかも値上がりしているのに、給料は上がりません。そうして、安倍さんが実施した2度の消費税増税で、消費は低迷しており景気は浮揚する要素がありません。
岸田さんが非課税所帯層にお涙金を恵んでくれ、電気代をちょっとだけ補填するそうであります。財政規律が崩壊しバラマキ資金は国債増額、しかし財務省は一度手に入れた打ち出の小づち「消費税」を決して手放そうとしません。労せずして自分たちが、思いのままに出来る税収(官僚たちの給料や老後の資金のもと)だからであります。
有権者の皆さんは、そんな事を承知のうえで自民党政治を肯じているのか、もしそうだとしたら、なんと自己犠牲的で寛容な民衆なのだろう、と思うのです。
愚かな国民以上の政府は出来ないとはよく言ったもんです。
僕は国民によって苦しめられております。