よく屋敷内に植えてはいけないと言われる植物があります。どちらかというと俗説・迷信めいた植物が多いのです。
例えば椿、藤、枇杷、ザクロ、紫陽花、百日紅、などでしょうか。これらは、ほとんどが縁起を気にして敬遠されることが多いのですが、植物たちにしてみたらいい迷惑ですね。例えば椿が首が落ちるように落花する、藤は首が締まる、百日紅は、下に落ちる・滑るなどの他愛もないような理屈です。ザクロは果実の割れ目が血のように赤く切り傷に見えるとか。
とはいえ、枇杷などは高木となり繁茂して屋敷が陰になる、イチジクは根が伸び盛り上がって家の基礎を持ち上げるなどの害があるので植えないようにしたのだという説もあります。藤つるは、木にからまり相手の木を枯らしてしまいます。椿にはチャドクガが発生するので、植えないように戒めたのかもしれませんね
縁起が悪い代表の植物は「ヒガンバナ(彼岸花)」洋名リコリスです。別名でも毒花・幽霊花・地獄花・死人花など印象の悪いものが多いのです。日本だけでも千種類以上の呼び名があって、日本人の生活や暮らしになじんだ植物でもあるのです。
なぜこんな不吉として忌み嫌われるかという理由にはいくつかの説があります。花がいきなり咲いたあと、しばらくして葉が出るという通常から逆の生態が不気味だという説。茎や球根にリコリンという毒素があり、子供達が誤って触ったり口に入れるのを避けるため。小動物が掘り返さないよう土葬のお墓に植えた風習があったこと、等がありますね。お彼岸の頃に咲く、梵語のmanjusaka から「曼珠沙華」とも呼ばれること、遠めに真っ赤な花が群生するさまから、仏教的な印象が強いせいもあるでしょうか。
ワタシは、土からすっくりと立って赤い花をつけるこの植物が好きで、近種のネリネ(ダイヤモンドリリー)とともにいくつも育てております。
これは昨年の9月の開花でありました。
今年はなんとひと月も早く8月1日に咲いていました。
下のは、花色から見て「園芸品種」、一般の原種ヒガンバナとはちょっと異なるのかもしれませんね。
それで、この時期もう一つ不吉な花「高砂百合」。5年半前に、突然マイガーデンに姿を現しました。渦巻のように長細い葉がびっしり生えて、白い蕾をつけました。ワタシが植えたものではありませんが、雑草とは違うのでそのまま抜かずにおいていたのです。園芸の師匠である家内から「高砂百合」と教わりました。調べてみると典型的な帰化植物で、主に種が風に飛ばされて広がり、球根で増えて数年群生し、いつのまにか居なくなるという生態です。そんな目で見ると、道端から一般家庭の庭先のあちこちで生えています。毎年お盆のころに決まって咲くのです。
その高砂百合が咲いた朝、ちょうど5年前、お盆の入りの日でした。義母が亡くなりました。義母はこの花が咲いたこの敷地内で数十年働いていました。家内に雑草と同じと聞いていたので、開花を待ってその日に抜いたのを思い出しました。
そして、それから5年経ち、また高砂百合がその近くに咲きました。(例年より少し早い8月9日の朝です)
すると、その日の朝、隣地に住む家内の従兄が亡くなったという報らせが飛び込んできました。享年70歳で、突然の出来事です。昨日みんなで彼を送ってきました。
お盆の時期に計ったように咲くこの白い花は、ワタシにとって「死招花」とも言うべき不吉な花と思えてなりません。この植物になんの責はありませんが。
これからは、二度とマイガーデンには生えさせないつもりであります。それが、お門違いで、迷信であろうとも。
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