
3/13 投稿 二卵性双生児 26話 宗太 執行猶予5年
虹子の父は虹子を連れて宗太を担当している弁護士にあった。
ちょうど弁護士も宗太の身寄りなどを探していた。
宗太がなにも言わず、親も兄弟もいないとしか言わなかったからだ。
宗太は虹子を巻き込みたくなかった。
虹子は知っていることを話した。
宗太の悲しい子供時代、親からさえ出来の悪さを嘆かれた子供時代。
双子なのにどうして宗太はこんなに馬鹿なの?
親が言うことかしら、びっくりしている父の前で話した。
要領のいい兄貴、兄貴のお古の女を押し付けられて。
あの家で、兄貴が跳びかかってきたから
肘でよけたら、転んでどこか打って・・・・
でも生きていた。
ただ宗太は救急車を呼ばなかった。
宗太に罪があるならそこだけなのだ。
弁護士も判決の推測の困難な事件だった。
それから2か月ほど経って宗太が釈放される知らせが虹子の父に来た。
虹子と父は宗太を引き取りに言った。
とりあえず、宗太は虹子の家に来た。
弁護士が虹子と父に言った。
宗太は有罪。
救急車を呼ばなかったこともさることながら、
その後の偽装がより罪が重かった。
宗太には5年という長い執行猶予がついた。
宗太は虹子と彼女の両親に囲まれて毎日が安心した生活だった。
宗太はすでに6冊の小説を世に出していた。
虹子の父はそのどれも読んでいた。
父は宗太に言った。
2階の部屋を使っていいよ、小説でも始めてみたらと提案してくれた。
おかしなことに宗太の1つ目の小説が大ヒットして
その著者が逮捕されたということで
好奇心でさらに本が売れた。
虹子の父は宗太を本当の息子のように心配したのだ。
宗太は部屋に入ってみた。
南向きの窓はガラス戸の内側に障子戸があって部屋は明るかった。
障子戸を開け、ガラス窓から外を見ると梅の花が咲きかけていた。
もう春なんだと宗太は思った。
それから宗一郎とあの家に初めて住み始めた春を思った。
小さいノックが聞こえた。
虹子が入ってきた。
宗太と窓に並んで庭を見ていた虹子が突然言った。
宗太、私が早朝に一人で台所でコーヒーを飲んでいた朝
宗太が庭の奥の木の後ろにいたの。
はっきり見えたわ、そこだけ明るくなっていたから。
でも宗太は今起きたって台所に入って来て・・・・・
宗太はびっくりして聞いていた。
その朝を宗太はすごくよく覚えていた。
それからその木の後ろに宗一郎の死体を入れたバケツを埋めたことを
思い出した。
宗一郎がさまよってると宗太は思った。
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二卵性双生児、 27話 宗一郎って男
宗太は虹子と両親のいる前で庭の奥の木の後ろに
宗太の死体を入れたバケツを埋めた話をした。
バケツを掘り出して宗一郎君の埋葬時に供養したほうがいいと
虹子の父が言った。
宗太は虹子と父を連れて自宅に行った。
宗太が虹子の父の車を運転した。
宗太の家の青いビニールシートはなくなっていた。
宗太は家に入って、虹子と父が続いた。
台所から裏庭に出た。
奥の木は2本並んでいたけどその1本がすごく大きくなっていた。
木の間から青い青い空が見えた。
雲ひとつない青空だった。
宗太が大きい木のに接近したとき、
宗太も、虹子も父もソウターって叫ぶ声が聞こえた。
宗太は声に打たれたように固まった。
その時、大きな音がして大きなほうの木の幹の1本が裂けて
宗太の向かって落ちて来た。
虹子が危ないと叫んだけど、声が出なかった。
幹の落ちて来たほうが宗太に刺さった。
宗太は地面に崩れ落ちた。
父は宗太に駆け寄り、虹子に119番、救急車と叫んだ。
木の幹は宗太に刺さっていたけど、宗太は生きていた。
宗太が着ていたコートのおかげで宗太に刺さった幹はわずかだった。
救急車に虹子も父の車で続き、二人は宗太が運ばれた病院に行った。
宗太はすぐ手術された。
幹は宗太の右のわき腹に刺さったけど、内臓と皮の間に刺さった。
傷は大きかったけど、宗太の命は無事だった。
虹子が知らせたので岡も同僚刑事も病院に来た。
虹子が庭の木の後ろに宗一郎の死体を入れたバケツを埋めたことを
話した。
岡に虹子の父が言った。
ソウターって声がして木の幹が裂けて1本が落ちてきて
宗太に刺さった。
虹子が言ったら刑事たちは信じなかったかもしれない。
でも岡は宗太の家の庭に行き、バケツを掘り当てた。
バケツの中には朽ち果てた枯葉が詰まっていた。
警察はそのバケツも検査した。
宗一郎の血液の跡と皮膚片があった。
血液型はB型だった。
発泡スチロールの遺体の血液型と同じだった。
宗太は2週間もしないで退院できた。
宗太は虹子の家に帰ってきた。
宗太は元気のようだったけど、ぼんやりしていた。
口に出させない恐怖が宗太の心にあった。
子供の頃、宗一郎は宗太より小さかった。
それなのに、子供の頃から宗太は宗一郎の言うなりだった。
小さい兄に がさばる弟、宗太は痛めつけられていた。
泣くのはいつも宗太だった。
宗太は小さい宗一郎が怖かった。
その兄に思い切り痛めつけられた感じだった。
小さい宗一郎は棒切れでもなんでも周りにあるなんでもつかんで
大きい宗太に向かってきて、容赦なく宗太をぶんなぐった。
親が宗太の泣き声に出てくると、宗太が悪いことをしていると
親が納得する説明をして叱られるとすれば宗太だった。
親が去ると言うことを聞かないと親父に殴らせるからと脅かした。
実際、悪さをしたのは宗一郎だったのに、
父親に殴られたのは宗太だったなんてことは一度や二度ではなかった。
宗太は宗一郎みたいに親を納得させるうまい説明なんかできなかった。
ベッドの中で宗太は虹子の手を握った。
母は頭の悪い宗太をそれでも愛してくれた。
虹子の手を握っていると母を思いだした。
母を独占しているかのような幸せなときだった。
宗太が母親をしたうので、宗一郎は宗太から母親を取り上げるように
常に試みた。
宗太が母親を独占できることなどめったにできなかった。
そういちろうにぃ・・・・・・・宗太は口の中で兄を呼んだ。
兄さん、僕のこと怒ってるって宗太が言った。
大丈夫よと虹子が母がよく言った大丈夫よを言ってくれた。
宗太がすっかりよくなった初夏、
宗一郎の葬儀が行われた。
虹子の父は自分の寺の住職に話し宗太のバケツのお祓いをしてもらった。
葬儀からの帰り道、日はまだ高かった。
ギラギラの太陽、宗太が空を仰いだ時雲が流れて横切った。
雲が宗一郎の目のような雲だった。
雲は遠くに遠くに流れて行った。
完
虹子の父は虹子を連れて宗太を担当している弁護士にあった。
ちょうど弁護士も宗太の身寄りなどを探していた。
宗太がなにも言わず、親も兄弟もいないとしか言わなかったからだ。
宗太は虹子を巻き込みたくなかった。
虹子は知っていることを話した。
宗太の悲しい子供時代、親からさえ出来の悪さを嘆かれた子供時代。
双子なのにどうして宗太はこんなに馬鹿なの?
親が言うことかしら、びっくりしている父の前で話した。
要領のいい兄貴、兄貴のお古の女を押し付けられて。
あの家で、兄貴が跳びかかってきたから
肘でよけたら、転んでどこか打って・・・・
でも生きていた。
ただ宗太は救急車を呼ばなかった。
宗太に罪があるならそこだけなのだ。
弁護士も判決の推測の困難な事件だった。
それから2か月ほど経って宗太が釈放される知らせが虹子の父に来た。
虹子と父は宗太を引き取りに言った。
とりあえず、宗太は虹子の家に来た。
弁護士が虹子と父に言った。
宗太は有罪。
救急車を呼ばなかったこともさることながら、
その後の偽装がより罪が重かった。
宗太には5年という長い執行猶予がついた。
宗太は虹子と彼女の両親に囲まれて毎日が安心した生活だった。
宗太はすでに6冊の小説を世に出していた。
虹子の父はそのどれも読んでいた。
父は宗太に言った。
2階の部屋を使っていいよ、小説でも始めてみたらと提案してくれた。
おかしなことに宗太の1つ目の小説が大ヒットして
その著者が逮捕されたということで
好奇心でさらに本が売れた。
虹子の父は宗太を本当の息子のように心配したのだ。
宗太は部屋に入ってみた。
南向きの窓はガラス戸の内側に障子戸があって部屋は明るかった。
障子戸を開け、ガラス窓から外を見ると梅の花が咲きかけていた。
もう春なんだと宗太は思った。
それから宗一郎とあの家に初めて住み始めた春を思った。
小さいノックが聞こえた。
虹子が入ってきた。
宗太と窓に並んで庭を見ていた虹子が突然言った。
宗太、私が早朝に一人で台所でコーヒーを飲んでいた朝
宗太が庭の奥の木の後ろにいたの。
はっきり見えたわ、そこだけ明るくなっていたから。
でも宗太は今起きたって台所に入って来て・・・・・
宗太はびっくりして聞いていた。
その朝を宗太はすごくよく覚えていた。
それからその木の後ろに宗一郎の死体を入れたバケツを埋めたことを
思い出した。
宗一郎がさまよってると宗太は思った。
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二卵性双生児、 27話 宗一郎って男
宗太は虹子と両親のいる前で庭の奥の木の後ろに
宗太の死体を入れたバケツを埋めた話をした。
バケツを掘り出して宗一郎君の埋葬時に供養したほうがいいと
虹子の父が言った。
宗太は虹子と父を連れて自宅に行った。
宗太が虹子の父の車を運転した。
宗太の家の青いビニールシートはなくなっていた。
宗太は家に入って、虹子と父が続いた。
台所から裏庭に出た。
奥の木は2本並んでいたけどその1本がすごく大きくなっていた。
木の間から青い青い空が見えた。
雲ひとつない青空だった。
宗太が大きい木のに接近したとき、
宗太も、虹子も父もソウターって叫ぶ声が聞こえた。
宗太は声に打たれたように固まった。
その時、大きな音がして大きなほうの木の幹の1本が裂けて
宗太の向かって落ちて来た。
虹子が危ないと叫んだけど、声が出なかった。
幹の落ちて来たほうが宗太に刺さった。
宗太は地面に崩れ落ちた。
父は宗太に駆け寄り、虹子に119番、救急車と叫んだ。
木の幹は宗太に刺さっていたけど、宗太は生きていた。
宗太が着ていたコートのおかげで宗太に刺さった幹はわずかだった。
救急車に虹子も父の車で続き、二人は宗太が運ばれた病院に行った。
宗太はすぐ手術された。
幹は宗太の右のわき腹に刺さったけど、内臓と皮の間に刺さった。
傷は大きかったけど、宗太の命は無事だった。
虹子が知らせたので岡も同僚刑事も病院に来た。
虹子が庭の木の後ろに宗一郎の死体を入れたバケツを埋めたことを
話した。
岡に虹子の父が言った。
ソウターって声がして木の幹が裂けて1本が落ちてきて
宗太に刺さった。
虹子が言ったら刑事たちは信じなかったかもしれない。
でも岡は宗太の家の庭に行き、バケツを掘り当てた。
バケツの中には朽ち果てた枯葉が詰まっていた。
警察はそのバケツも検査した。
宗一郎の血液の跡と皮膚片があった。
血液型はB型だった。
発泡スチロールの遺体の血液型と同じだった。
宗太は2週間もしないで退院できた。
宗太は虹子の家に帰ってきた。
宗太は元気のようだったけど、ぼんやりしていた。
口に出させない恐怖が宗太の心にあった。
子供の頃、宗一郎は宗太より小さかった。
それなのに、子供の頃から宗太は宗一郎の言うなりだった。
小さい兄に がさばる弟、宗太は痛めつけられていた。
泣くのはいつも宗太だった。
宗太は小さい宗一郎が怖かった。
その兄に思い切り痛めつけられた感じだった。
小さい宗一郎は棒切れでもなんでも周りにあるなんでもつかんで
大きい宗太に向かってきて、容赦なく宗太をぶんなぐった。
親が宗太の泣き声に出てくると、宗太が悪いことをしていると
親が納得する説明をして叱られるとすれば宗太だった。
親が去ると言うことを聞かないと親父に殴らせるからと脅かした。
実際、悪さをしたのは宗一郎だったのに、
父親に殴られたのは宗太だったなんてことは一度や二度ではなかった。
宗太は宗一郎みたいに親を納得させるうまい説明なんかできなかった。
ベッドの中で宗太は虹子の手を握った。
母は頭の悪い宗太をそれでも愛してくれた。
虹子の手を握っていると母を思いだした。
母を独占しているかのような幸せなときだった。
宗太が母親をしたうので、宗一郎は宗太から母親を取り上げるように
常に試みた。
宗太が母親を独占できることなどめったにできなかった。
そういちろうにぃ・・・・・・・宗太は口の中で兄を呼んだ。
兄さん、僕のこと怒ってるって宗太が言った。
大丈夫よと虹子が母がよく言った大丈夫よを言ってくれた。
宗太がすっかりよくなった初夏、
宗一郎の葬儀が行われた。
虹子の父は自分の寺の住職に話し宗太のバケツのお祓いをしてもらった。
葬儀からの帰り道、日はまだ高かった。
ギラギラの太陽、宗太が空を仰いだ時雲が流れて横切った。
雲が宗一郎の目のような雲だった。
雲は遠くに遠くに流れて行った。
完
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