児童文学であるものの、推理小説のような謎にみちていて一人の少女の成長記でもあり、読後には人間の欲望の業の深さを重く感じられた作品。
「種の起源」が発表された19世紀後半のイギリスが舞台となっている。
高名な博物学者サンダリー師による世紀の発見の化石が、ねつ造であるというスキャンダルに追われ、サンダリー一家はヴェイン島に移住する。
しかしまもなくサンダリー師は謎の死を遂げる。娘のフェイスがその死に疑問を持ち調べるうちに、人の嘘を養分に成長し、その実を食べた者に真実の夢を見せるという
「嘘の木」の存在を知る。
フェイスはひそかに嘘の木を育てることで父の死の真相を探る。
19世紀の英国の階級社会・文化の中で、限られた社会生活しかできなかった女性の哀しみ、強さもフェイスの周りの女性から感じられ、
それから抜け出そうと好奇心や向上心でいっぱいのフェイスの行動力が胸を打つ。
最後は児童文学にしては重く哀しいけれど、少しの希望を胸に荒波を渡ろうと決心するフェイスを応援したくなる。
宮部みゆきさんも絶賛のこの作品は、今の国内のベストセラーと言われている作品の仲間入りが十分できるほど、圧巻のエンターテインメント作品であると思う。
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