「ベルリンは晴れているか」 深緑野分

2019年03月12日 | 読書
自分は平和な戦後に生まれたが、、祖母や父から色々と戦中戦後の暮らしの話は聞いてきた。テレビドラマや映画でも国内の戦中戦後の話は幾度となく語られ映像化されてるから、知ることも想像することも難くない。

しかし同じ敗戦国のドイツはどうだったのか?アメリカ映画ではドイツ軍は徹底して悪に描かれナチスの残虐さや冷酷さを強調していた。
でもドイツ国内には生活があり市民は日本の戦時中と同じように厳しい暮らしを強いられていた。

この小説を日本人が書いたのは、知識や調査では得られることはあっても、それだけでは表現できない。その同じ状況に共感できる精神的なものがあるからこそだったに違いない。
読み進めていくと、自国が他国の、それも主義の違う国々に分割されるという混乱した状況の中で力強く生きていかねばならない一人の少女の気持ちに、幾度となくおしつぶされそうになる。困難な旅を行く中で知る真実の悲惨さ。最後は悲しいけれど少しの希望もある。

筆者の圧倒的な表現力にぐいぐい引き込まれて最後まで一気に読んだ。
まだまだ知らないこと、知らねばならないことが多くあると考えさせられた小説だった。

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