「羊と鋼の森」   宮下奈都

2016年04月28日 | 読書
 本屋大賞をとるまえから気になっていた。

 まず、タイトルと装丁が素敵なことと、立ち読みした途端、ピアノの情景が
 浮かんできたこと。

 本屋で思わず目頭が熱くなって困ったので、慌てて購入し、じっくりと読む。

 
 これは家にピアノがある家庭や、学校のピアノに少なからず関心のあった人は
 誰でも感じるノスタルジックな思いを、具現化した本なのだと。
 
 
 母が亡くなってから、あえて思い出そうとしなかった。
 
 暗い蔵の奥に 私専用に置かれたそれは、習うのをやめた後も、哀しい時、楽しい時、
 そばで弾いて 私の心の友だった。
 またピアノが好きで、私よりも上手な母が時折弾いてくれたショパンは母の人柄そのものの響きだった。

 母が亡くなった後、それを本当は持ってきたかった。
 蔵を壊したとき、その処理をどうしたか本当は聞きたかった。
 でも、いろいろな思いが重なって、結局、古いピアノはどこかにいってしまった。

 私にとってそれは友だったのに、母の病と死によって目をふさぎ、きちんと向き合わなかったことを
 後悔している。

 しかし、この本を読んだことによって、私の心が少し救われたような気がするのは、
 今もどこかで、私のピアノが鳴っているからと思えるような気にさせてくれたから。

 
 この本を読んだすべての人の心にピアノの森の響きが、永遠に届きますように。





 

 

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