走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

今より良い仕事?

2020年08月18日 | 仕事
既存のヘルスケアシステムでは州民の健康度は上がらない。誰もが認めている事実。しかし我が州では家庭医の報酬体制を変える意思は医師会には全くなく、家庭医に至っては医師が患者を選ぶ(医師不足なので医師は患者の選り好みをする)。家庭医やNPを見つけることができないメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、複数の慢性期疾患を抱えている患者は家庭医が見つからず、救急室へ雪崩れ込む。

2017年から始まったBC州の現政権は社会的弱者に優しい政権。医師の考えや働き方を変えるより、今までとは違う形のクリニックを作り出す事に費用をかけている。それはチーム医療のクリニック。医師やNPの他に看護師、薬剤師、カウンセラー、栄養士などチームをコミュニティーへ投入する事で州民の健康度を上げると言うわけ。医師は治療した患者の数や内容ではなくサラリー制となり数より質を狙うわけ。既に何軒かオープンしている。

で、コロナのロックダウンが始まる前に私の働く街にもそれが建設される事となり、州の厚労省と保健機構による説明会が医師会で行われた。殆どの医師が反対の意を示した。これには驚いた。自分のクリニックの患者数が減るわけでもないし、今の既存の報酬制度が変わるわけでもない。なのに強く反対するのだ。

理由はその新しいクリニックの高いオペレーション費用。普通のクリニックのおよそ2倍はかかる。当然だ。雇われる医療者の数が違うのだから。ある医師は「そんな豪華なクリニックに使うお金があるなら、最新の医療機器を購入して欲しい」他の医師は「その費用は自分が支払う税金で賄われている。納税者として、そんな無駄遣いは許さない」とまで言う。最後のトドメは「そのお金を自分に回してくれ、今よりずっと良い仕事をして見せる」ときたもんだ。今までより良い仕事って、今はベストを尽くしてないわけ????

セッションの中で保健機構の地元の代表者はイラつきを見せ、今この計画に難色を示せば話は他の街へ行ってしまうんだぞ」とまで言ったが医師たちの反応は変わらなかった。あれから半年。きっとあの資金は他所へ行ってしまったに違いない。

それにしても時折頭に浮かぶ、「今より良い仕事をして見せる」どんな仕事内容を言っていたんだろう、、、、


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