走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ティラノサウルス

2020年04月06日 | 仕事

炬燵で寝てしまい寝起きに手が痺れる、こんな経験をした人は少なくないはず。もしそういう寝方を毎日繰り返していたらどんな事が起こるか知っていますか?正式な診断名は

Radial nerve palsy
ですが別名
Saturday Night palsy
週末に起こりやすいから?そんな名前が付いています。英語圏ではコタツなんてありませんから、ベット以外で寝入ってしまう、例えば椅子やソファーで眠るとなります。
日本語では橈骨神経麻痺症。

さて彼は30代前半。トラウマ経験からベッドで眠れなくなり、ベッド以外のところでウトウトするのが習慣になりました。麻薬系の依存症もあり、オーバードースも数回。1型の糖尿病がありますがコントロールできていない(つい最近までホームレス、食事に興味なし、不規則な生活、よって血糖値のチェックもインスリンの投与もまばら)ので、その為に意識を失うことも時折。そんな彼が電話を入れてきます。

朝起きると左手がティラノサウルスみたいになって動かない!脳梗塞かもしれない!と。

ほら、ティラノサウルスって腕が短くて手の部分が下に向かって折れ曲がっているようにダラんとしてる(正確に言うと爪が長くて鎌状)、あの状態です。重力に反して腕をあげると手首に力が入らずダランとしている。日本で言えば幽霊の手?

新型肺炎のお陰でもっぱら電話診察(私の患者の殆どがPCやスマホを持っていないのでビデオ診察ができない)。出来るだけの問診をして、診断の為には身体所見も必要だし、最悪の鑑別診断をしてもらう為(脳梗塞や脳内出血、つまり頭部CT)に救急室へ送りました。救急医の診断は橈骨神経麻痺。CTをすることもなく退院。経過観察です。

しかし彼もサポートワーカーも不安から電話をしてきます。なんたって数日後には反対の手も同じことになったのだから。

リストガードをつけて、ベットで寝る習慣をつけて、血糖値もコントロール(できていないと神経系もやられますから)する事の重要性。それらができるように計画も一緒に立てました。そして病気について丁寧に説明しました。原因を取り除くと1〜2週間で回復します。骨折などの外傷がない限り経過観察が普通です。自暴自棄な彼。これをきっかけに自分の健康に興味を持ってくれるかな?

我が家の桜は3分咲き



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