走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

シーソーの傾き

2021年09月17日 | 仕事
昨日の勉強会。

麻薬処方について。北米では術後や怪我に対して麻薬を簡単に長期間処方していた時期がありました。それにより処方麻薬からの依存者が増え、依存しない麻薬を売り文句にしていた製薬会社も訴訟に負けて風向きは一気に変わりました。カッレジによる麻薬処方の取締、教育課程の変更などなど。このようにして癌性疼痛以外では麻薬の処方は減りつつあるのが現状です。

大変興味深い論文が近々発表されます。オンラインでは既に発表され、雑誌が出てくるのは10/1。それは上記の変化により2016年あたりから麻薬で死亡する確率とオーバードース(OD)に関連した救急受診者の上昇です。

おお、これは興味深い。わかりますか?今まで湯水のように垂れ流しだったものの栓をキュッと絞めたわけですから、湯水の恩恵を受けていた人がどうなるか?湯水を求めて彷徨う。つまり違法薬物へ手を出す図式が成り立つのです。

そういう患者を多く診察しています。時間をかけて減量したり、OAT(Opioid Agonist Therapy)へ切り替えたりします。しかし時にキュッと栓を締めたくなります。だって専門医に誤解されるような事を言われると他の医療者と同じように締めちゃえば!と心が揺らぐ時も。でもそうした事で違法薬物へ手を出して、ODの結末へ。実際経験しているから勉強会の講師の声が響きました。

白黒つけろ!と人は二者択一で物事決めてしまう時が多いけれど、シーソーが反対側へガターン!と傾いてしまうとそこに乗っている人は衝撃を強く受けます。極論ではなく微調整だったり、スピードを緩めたり、ある程度の流動性は必要なのではないでしょうか?と思いました。

冒頭写真: 今回キャンプへ行った地は大規模な山火事があった地域を通り抜けました。今まで青青と針葉樹が育っていた場所が針の山になっていました。それも何キロも続いているのです。未だに煙が上がっていたり高速からも見える火もありました。しかしこの場所はまだ小さい地域だったとか。北部は何倍もの大きさで延焼しているそうです。地球の悲鳴が聞こえてきそうです。


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