走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

些細なことかどうか

2022年05月05日 | 仕事
どこをどう見てもパニックアッタク。それでも主訴は呼吸困難ですから、問診、身体所見を全て診察してから診断へ。

2日前も診察している。COPD(慢性の肺の病気)が少々悪化しているよう。Flare Up プランというものがあります。症状により3段階の対処方法が書かれているもので、患者の治療内容によってカスタマイズさせるものです。信号のように3段階なので黄色はステロイドや抗生物質の内服です。タイミングが大切なので診察なしで服用開始できるようにスタンダードオーダーを薬局に出しておくのが常。

で、その服用を始めて3日目。3年ぶりにFlare Upになった彼女は

ステロイドの服用日数が少ないけれど大丈夫か?と不安でいっぱいです。週末に向かって追加の処方が必要なのではないか?と。だって少し調子は良いけれど、完全には良くなってないから、、、と涙をこぼしながら話す彼女。

不安なの?と聞くと大泣きとなりました。だって3年前は死ぬかもしれないほど息ができなかったのよ!

そうよね。過去の経験は強いメッセージとして残ります。しかし彼女の状態はさほど悪くない。

完全に回復するまで内服は続けるべき

と勘違いする患者は多い。いえいえ、この場合高容量のステロイドは5日が上限で良いのです。もし悪化するときは迷わず救急車を呼びましょう。誰も咎めたりしないから。大丈夫。全体的な症状は上向きだから。このまま内服をして、吸入薬も今まで通りする。落ち着きますよ、と。診察室を離れるときは笑顔がみれました。

些細なこと、しかし不安症を持つ患者にとって、その些細なことがモンスターのように大きくのしかかる。状況や思考過程を整理できるようにサポートする、それだけで落ち着くときもあるんです。

冒頭写真:こんなちっぽけな沼地ですが沢山の野鳥がいて囀りが賑やか。春ですよ〜


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