走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

餓死する事が分かっていても

2018年02月04日 | 仕事
経口から食事をとる事が出来ない人は管で流動食をとるようになります。口から全く食べないのだから、食費を流動食に回せば良いと政府は考えます。なので流動食を買うための食費は医療費と認められません。

しかし貧困層でフードバンクなどで食料をまかなっている人はどうでしょう?住居費や光熱費を支払った後に残るのはわずか。だからタダでもらえる食料品を頼る。フードバンクでは流動食を配ったりしません。流動食は高価なものでスーパーで安売りにでる商品でもありません。原価で買うしかないのです。

この夫婦は2人とも生活保護を受けていて食費は娯楽費を含め月に2万円しか残りません。奥さんの流動食は月に2万円9千円かかります。私は政府がこの流動食にかかる費用を払うように申込書を書きました。だって流動食が買えなければ奥さんは栄養失調になり病院へ逆戻りになるからです。病院のベッド代は1日で2万円以上。個人負担ではなくても州のポケットから支払われるから、月2万9千円を払った方がずっと格安になります。

しかし役所は言います。現在の規定では対象にならないと。規定のことは十分知っています。しかし特別なケースとして認めてもらえないか訴えましたが結果は変わりませんでした。

生活保護を受けている夫婦のせいではない。地価高騰で賃貸料もうなぎのぼりの一方、生活保護に支払われる金額は10年以上変わっていない (前回の選挙で政党が交代し月1万円の増額は始まりましたが、それでも追いつけることのできないほどの地価高騰なのです)。

私は夫にアドボカシーのエージェンシーへ行く事を勧めました。そこには将来弁護士を目指す人たちがが働いています。相談に来る人へは無料で奉仕します。カナダ人の全てに最低限の衣食住を保証する国の政策が生み出した落とし穴。特別に許可が下りる事を願って。


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