走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

新しい役割

2014年12月05日 | 仕事
精神病を持っているから親になれないのではない。障害の度合いに見合った適切なサポートがあれば精神病があっても親業を継続することができる。

今週アイリーンが親となった。19歳の彼女を紹介されたのは夏の終わり。妊娠25週、引っ越して来たばかり。性的虐待を父親から受けながら育ち15歳の時に自分から裁判を起こして父親との縁を切った。母親とも不仲でそのストレスから学校もやめてしまい、自殺を何度もトライして精神科への入院も頻回にあった。彼女の診断は鬱、低い社会的なファンクションとスキル、双極性障害の疑いもあり。オンラインで今の彼、赤ちゃんの父親であるケインと出会う。母親から離れたい一心で彼と一緒になることを決めてこの街にやって来た。

ケインもメンタルヘルスの持ち主。双極性障害。母親と1LDKのマンション暮らし。と言うより転がり込んで住まわせてもらっている。障害がひどく家賃の支払いなど基本的なことがきちんと出来ない。フルタイムで働くことが出来ない彼。障害手当の支給金と日雇いの収入で生きている。そこへ転がり込んで来たアイリーン。アイリーンは働いた経験もなく障害手当の申請も行なっておらず収入は全くなし。

私に紹介される前から既に保健師がケアに関わり、若年層の妊娠の指導員が関わって来た。まずは赤ちゃんのために安定した家が必要。市の職員の手伝いもあったに関わらず今だに家を見つけていない。私からはエキストラのサポートとしてメンタルヘルスケアセンターへの紹介をしたが二人ともそれを断ってしまった。MCFDも既に関わっている。この二人が赤ちゃんのケアが安全にできるかどうかがいつも論点になる。

手厚いケアで出産まではこじつけた。赤ん坊が生まれた今、これからが正念場。チーム一丸となり赤ちゃんが安全に発育できる状況をサポートしていかなければならない。赤ん坊の主治医になるのは私。アイリーンもケインも私の患者だ。親としての新しい役割、ストレスが彼らの病状変化をしっかり診て行きたいと思う。



秋深まる林

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