走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

何気無く

2015年01月02日 | 仕事
ジョーは32歳。ホームレスで複数の薬物依存。そのうちの一つは処方箋薬で徐々に減らし、行く行くは中止する予定。2度目の受診に数日遅れて私は心配した。禁断症状(退薬症状)が出て病状が悪くなるのではないかと。彼の薬は一日ずつ処方されるようにしてある。悪用できる薬だし、処方以上摂取する可能性が高いからだ。

薬局に電話すると彼は他の町に移ったよ、と言われた。よくる話だ。ホームレスの人たちは街を点々とする。処方箋は薬局間で転送できる(できない薬もあるが)。ところが数日後ジョーが現れた。退薬症状と共に。他の町に移ったって聞いたのにどうしたの?と聞くと驚く彼。彼にはちゃんとした理由があった。それよりもどうして私が他の町に移ったことを知っているかと驚いていた。

心配で薬局に電話して聞いたのよ。

それ以来受診の予約通り来るようになったジョー。

相変わらずチャンスがあれば違法薬物を使用している。隣町とわが町を行ったり来たり。凍える日はシェルターへ泊まり、仲間の家に転がり込んだり野宿したり。

ジョー、将来の計画はあるの?と聞くと、計画??

家を探すとかパートの職を探すとか(彼は障害手当をもらっている)、ボランティアをするとか?

俺ってそんなこと全然考えてないな、、、必要かな?

今は32歳だけどこうやってずっと生きて行く気?先は長いよ。じゃあ今週の宿題は考えて見ることね、と伝える。

いいかもね、考えてみるよ。あ、住むところはここって決めてるんだ、と。

どうして?

だって、俺のこと心配してくれたんだろ?嬉しかったよ、だからここにずっといるって決めたんだ、と。

何気無く言った一言が患者さんの心に響いている。自分はそう言う仕事をしているのだとしみじみ思った。






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