走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ブレーキ

2015年01月01日 | 仕事
デビーが診察にやって来た。T3がなくなるから処方して欲しいと。

???始めてあった時、もう服用していないって言っていなかった???

T3はアセトアミノフェンとコデインとカフェインが入っている痛み止め。T1,T2と数字が上がるたびにコデインの量が増える、T3以外は処方箋なしで薬局で買える。術後や急性の痛みなどに使われる。

デビーは慢性頭痛があり、以前の主治医にT3を処方されやめられなくなったと言う。何度も言うが慢性の痛みに麻薬を使用する時は気をつけなければいけない。急性やガン性の痛みと作用機序が異なり依存しやすくなるからだ。私ならデビーのような人に絶対処方しない。

よくよく聞けば3週かけて服用量を減らし2週間ほどやめていたが、家に残りがあって飲み出したらやめられなくなったと言う。

本当にやめたい気持ちがあるのかと尋ねる。彼女の決心はかたい。

一緒に2週間ごとの減量プランを立て、処方も2週間ごととした。薬局で処方箋料が取られるのでほとんどの患者さんが3ヶ月分出してもらうとを望む。しかしそうすると180錠ドーンともらうことができる。そうするとついつい飲み過ぎが起こる。そう言う人や悪用されやすい薬の長期処方は禁忌だ。2週間ごと、1週間ごと、時には1日ごとの処方にして乱用にブレーキがかかるようにする。

デビーがありがとう嘘をついていたことを咎めないでくれてと言った。確かに以前の診察で私は彼女のことを疑わなかった。

私の返事は、
デビーの体はデビーのもの。デビーがしたいようにするのが普通だよ。私の仕事はデビーに一番いいと思うことを勧めること。それを吟味して行動に移すかどうかはデビー次第だからね。私としてはこうやって正直に話してくれたことが嬉しかったよ、と伝えた。

涙ぐむデビー。
私は子供の頃にずっと虐待と性的虐待にあっていて、自分の体が自分のものだなんて思えなかったの。こうやって改めて言ってもらうともっと大事にしなくちゃって思えるわ、と。

みんな辛い過去を背負っている。吐き出したいことを吐き出して楽になるならいくらでも聞きますよ、、、。




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