走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ADHD

2015年03月26日 | 仕事
昨晩はADHDの勉強会だった。
ADHDは日本語で注意欠陥、多動性障害と言う。
わたしの患者層には非常に多い診断名だ。

北米では疾病率が急上昇し、製薬会社、親、教師がこれを後押しした、個人の特徴を病気にしたなど論議も上がりましたが、今の仕事をしていて感じるのは、薬物依存、ホームレスや貧困の背景にADHDがあることを否定できないと感じるほど多いことだ。

集中することが難しく、落ち着きがない。授業中に歩き回ったり、託された課題をすることができない。年齢が上がるにつれそういう症状は少なくなるが、授業についていけない、忘れ物が多い、提出物を忘れる、言動に安定性がない、順序的に物事を考えることより感情が先行する、やりだすが終えることができない、やり方を知っているがいつ使えばいいか適当なタイミングがわからない、など社会生活に必要なことができないので、中退の原因になったり、職が長く続かない、人間関係や恋愛関係が上手くいかないなどの結果が生まれる。社会で上手く生きていけないと次に不安症や鬱が付随してくる。そして治療されていないと神経が刺激物質を求めるので覚醒系や鎮静系の薬物依存になりやすく、ギャンブルや、インターネットの依存にもなりやすい。

薬物療法も有効だが、並行して大事なのがチアリーダーと秘書の存在だ。秘書がスケジュール片手に何を今するべきか、思い出させることができれば忘れ物がなくなり期限を守ることができる。チアリーダーが応援すればやり出したことをおしまいまでやり通すことができる。何をいつどんなタイミングで使うのかチアリーダーや秘書が教えてくれる。こういうサポートは不可欠だ。そういう人が周りにいれば、もしくは自分なりの技術を併せ持てば成功する人はいくらでもいる。独特な発想で新しいビジネスや研究結果を出した多くの人がADHDを持っていると言われている。

ADHDの原因は未だに明らかではなく、これだ!と言う確証的な影像や血液検査も確定されてない。本人や周りの主観、行動が診断材料となる。しかし高い遺伝性は明らかになりつつある。

社会の"落第生"になりやすいADHD。早期発見治療はそういう点からも重要だ。ADHDの息子を持つ親としても声を大にして言いたい。彼のことを書いたブログはこちら。シリーズで書いているので是非1から最終回まで読んでみてください。



アンテロープキャニオン、アリゾナ州
水で削られた美しいキャニオン。赤ピンクのような岩肌は砂状。迷路のような中に光が入り込むととても綺麗。

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