走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

酒豪

2019年09月26日 | 仕事
カーフェリーで島へ渡りました。



そのフェリーの中で隣の人が大きな声で話をしていたのでついつい聞いてしまった内容。地元の方がアメリカから来ている観光客と英語で話をしていました。

自分の家族は皆、アルコホーリックだ。皆アルコールに強く、母なんか毎日ワインを3本平気で飲み切る、、、と。

アルコール依存の診断はDSM5と言う精神科系疾患の診断基準を使います。そちらを書くと診断話になってしまうので違うアングルから書きましょう。

おっとその前に各国それぞれアルコールの摂取はこれぐらいにしておいた方が良いですよーと言う通達はある。

酒量の言い方

これ以上飲むからアルコール依存と言うわけではない。依存と言うくらいだから依存症状があるのが依存なのだ。

CAGE と言う問診をする

Cut down 周囲から酒量を減らせと言われたことがある
Annoyed 酒を飲む事を周囲の人に鬱陶しがられる
Guilty 酒を飲むことに負い目を感じる
Eye opener 酒を飲まないと1日がやっていけない。朝一番にお酒を飲んで目を覚す。

これのどれかがイエスとなると、もっと詳しい問診に入りDSM5に当てはまるかどうか吟味します。大雑把に言えば生活に必要な事(仕事や人付き合いストレス対応)に耐えるためにお酒を飲む、お酒の為に仕事を失ったり学校へ行けなくなる、家を失う、家族を失う、など酒による代償を払うようになるとかなり進行しています。

クロアチアでコーヒーの代わりに朝からビールを飲む人を多く見かけます。ビール代は水代より安いのも事実。ワインの美味しいお国柄でワインの消費量も半端ではありません。私はお酒に強くないので少し飲んでもダメですが、強い人はかなりの量を飲んでもへっちゃらと言う人だっています。お酒に対する耐性力は人それぞれで、酒量がアルコホーリックの指標になるわけではありません。それよりもその影響、特に社会的役割を果たしているかどうかが最も大事なのです。

と、一番始めの話に戻って、ワインを3本平気で飲み切る母親が、酔っ払って子供の世話もしないとか暴力をふるとかであれば依存でしょう。しかし仕事にも行き、家庭の切り盛りも家族関係も良好ならば、酒量が多いけれど社会的役割をしっかり果たせるので、依存ではない、と言うことになります。

しかしその境が見えなくなり、嗜好品から病に知らぬ間に移行する人も多いのも確か。そういう意味で酒豪に警告的な意味を込めて、酒量の制限範囲が示されているというわけです。

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