走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

生命力の強さ

2020年10月30日 | 仕事
避妊器具のIUDについて以前書きました。IUDは5年毎の更新です。使用後の妊娠に支障を与える事はほぼなく、北米では経産婦の有無に関わらず、小児科医と産婦人科が一番に勧める避妊用法です。

で、患者教育の中でIUDを抜去したら、その日にでも妊娠する可能性があると話します。

で、彼女は子供にも恵まれて、もう妊娠はしたくない、男もうんざり、男とは付き合う気は無いし彼とも別れたからIUDを抜去して欲しいと言っていました。

同じような台詞でしっかり妊娠した過去がある彼女。IUDの存続か他の避妊方法を強く勧めましました。カウンセリングも何度かして日にちをおって意思の変更がないか確認した上で抜去しました。

3ヶ月が経ち、妊娠検査は陽性です。しかし彼女はIUDを抜去してからは性交をしていない、と限定の助詞「は」を強調します。では抜去する前に性交をしたのはいつか?と聞くと前夜と言います。愕然とする私。だって問診をしている時の記録によるとアクティブではない、とはっきり言っていましたから。

知っていますか?一旦子宮の中に入った精子は数日間生きているんですよ。

てことは抜去前日に進入した精子が生きている間に排卵があって(IUDは排卵を完全に制御するわけでは無い。受精と着床を阻害する)、IUDの邪魔者が居なくなって受精がおこり受精卵は着床できたって事だよね。何という生命力。

これからは抜去の前過去5日間の間に性交したかどうか、していたら抜去により妊娠する事を再度伝えて抜去しなければ、と学んだ。こんな教育はガイドラインに入っていなかった。いえ作用機序を考えればありえるけれど、、、彼女のようにしていないと言いつつ、、、のケースのために。望まない妊娠は辛いだけですから。


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