シリーズ2日目。イギリスの未熟児集中治療室殺人事件のことから。
この事件のポイントの一つにあるのが捜査と逮捕の遅れ。何故逮捕までに時間がかかったのか?特に医師側からは疑問を看護部の方へ訴えていたのに。
これを聞けば、看護部や施設側が医師の疑問(疑惑)を聞き入れていれば、被害者はここまで多くなかった、と思う人が多と思う。何故こうなってしまったのか?
医師たちは気づいていた。犯罪者がシフトの時に予想しない急変が起こり児が死亡する。しかし手技ミスや証拠になるものがなかった。偶然と直感。それのみで捜査を始めればハラスメントと取られる可能性が高い。それどころか損害賠償へも繋がる。イギリスの免許団体の詳細は知らないが、カナダでも同様だ。雇用主が疑いだけで面接などをしたら、労働組合が不当な扱いと雇用主を訴える。このせいでカナダの元看護師の連続殺人事件も発見が遅れた。
医師側は看護師を監視できるようにカメラの設置なども要望している。死亡ケースのレビューも申し込んでいた。煮え切らない上部。とても難しいケースだと思う。犯罪者のやり方が巧みなだけに証拠が残らない。
一般の方々は理解できないかも知れない。疑わしきは罰せられる(捜査される)べき。病院は命を預かる場所。こんな生ぬるいことしかできない場所なら病院には行かない!と思う方もいるでしょう。
しかし考えてみてください。もし偶然が重なって自分のシフトの時に死亡率が高い、と疑われ、捜査されれば、その人の人権は損害されます。これが損害賠償に繋がる所以です。それに医療ミス、医療事故の発生率は世界中先進国内では軒並み同じぐらいで14人に1人は死亡もしくは重症な障害を負っています。これは医療を行うものが人間である限り起こり得る事です(だから安全システムを作ることが命題)。よってミスによって死亡、障害のケースを犯罪にしてはならず、関わった人を咎めるわけにはいかないのです。これをしだすと、そのような環境で働きたいと希望する医療者は減るからです。だって医療者は人間でミスをするのですから。
続く
冒頭写真: 昨日と同じ国立公園内。あちこちで地面が裂けているのです。