走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

先住民の文化

2016年08月17日 | 仕事
15世紀後半にフランスとイギリスから白人がカナダへやってきました。それまでは先住民だけが住んでいました。先住民の中でも西海岸に住む民族は十分な食料に恵まれ芸術も栄えていました。自然と繋がり民話にもトーテムポールにも動物が必ず使われていました。動物は熊、レイバン(烏よりもっと大きい)、大鷲、クジラ、シャチ、狼、鮭などなど。

彼女は1月の下旬に私の患者になりました。過去を語ることを頑なに拒んでいました。先住民であり、子供の頃人が殴られたり、殴ったり、そういう場面をよく見ていたとは話してくれた。過去に診断されたのは不安症とトラウマとも話してくれた。

私に出会った時は抗うつ剤だけ内服していた。眠れないから以前服用していた抗精神剤の処方を希望した。良く処方するパターンだ。希望通り25mgを一錠、そしてそれは2錠へ増えた。それでも少量の処方だ。多くの事を語らない彼女だが、積極的にカウンセリングへ行ったり、雇用のトレーニングにも参加していた。

1週間前の診察では、睡眠薬を1.5錠にした。調子が良いし、夜もよく眠れると。最近できた友達の話をした。彼らと夏を楽しむのだと。ビーチへ行くのよと嬉しそうに話してくれていた。

そして今日。彼女は豹変していた。食堂で声をあげオペラシンガー顔負けの声を張り上げ、先住民の歌を歌い出したと思いきや、政治家顔負けのスピーチをしだしす。内容は女性のレイプや、女性の権利、そして先住民の権利。人権の平等。話の内容は次々変わる。そして彼女は動物になる。狼のように空に向かい吠えたり、鳥のように両腕を羽ばたいたり、椅子の上に飛び上がり背を高く見せて威嚇したり、熊のように歩いたりする。動物の鳴き声もどこで練習したの?と聞きたくなるぐらい上手いのだ。

続く。



西海岸側の豊かな自然。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
北西沿岸部の先住民 (kay)
2016-08-17 08:08:29
北米大陸の先住民の歴史と文化に興味があって、はるかむかしに
シアトルとヴァンクーバーを旅したとき、先住民の美術館を訪れたものでした。
トーテムのデザインが独特で非常に魅力的ですね。
題名は忘れちゃったけど、北西沿岸部の先住民の世界を描いたテレビドラマも観ました。
返信する
Kayさんへ (美加)
2016-08-17 12:14:27
バンクーバーへ来られたことがあるのですね。UBC博物館ですか?自然界と精通している民族だと思います。自然や生き物に対する尊敬、共生を感じ取れる文化だと思っています。それを宗教に名の下に取り上げ絶滅しようとした悲しい過去は先住民にとって深い傷となっています。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。