シリーズ5日目
シリーズの要約:
1日目:プロは自治団体を持ち、自治団体内で全てをまかなっているので、外部から干渉されない。
2日目:強制力(法的効力)のないスタンダードやスコープは無意味
3日目: プロの自治体は教育機関と無関係なものでなければならない
4日目: スタンダードとスコープとは
シリーズでずっと紹介しているカナダBC州の免許を管理する団体が想像できない人のために書きますね。
1日目に団体は免許の発行、管理、毎年更新やスタンダード、スコープの作成と更新を行なっています。ここに登録されていてそのプロ名を名乗って働くと言うことは、スタンダードやスコープを守る義務があり、守っていない登録者は罰せられる(免停、免許取消)機能があります。と書きました。カナダではカレッジと呼ばれ米国ではボードと呼ばれています。
自治体ですから免許毎にその免許を保持している人物で構成されています。あくまで自治ですからこのポイントを忘れずに。そしてもちろん教育機関とは関係のない人物です。臨床から全く外れた仕事になるので、現場を置き去りにしないためにもプロジェクトチームには臨床家が短期契約で現場の声を持っていくこともあります。以前それについて書いたブログはこちら。
免許更新システムを構築し(現在は全てがオンライン化)、免許保持者の詳細把握(データ管理)、スタンダードとスコープのアップデートを常に行っています。だって医療は常に変化していますから、それに看護の実践が追いついていることは必須です。
そして免許保持者の管理、つまり監視。定期的な記録監査やクレームが来れば捜査、そして審議。看護だけではなくプロ組織は登録者の記録も公表しています。免停中とか審議中とか過去に介入した理由などなど。審議は裁判みたいなもので傍聴することもできます。だから公民から信頼されるんですよ。そして登録者はスタンダードとスコープを守らなければならない意識も出るわけです。
もちろん罰するだけではありません。登録者に最低基準を守って活躍してもらうのが本来の目的なので、サポート役割もあります。しかしこれは教育ではありません。あくまでサポートなのでコンサルタントがいて現状にあるジレンマ(スコープを逸脱しているかどうか?スタンダードに対する疑問)について質問、相談することもできます。
海外で看護師をしていた人の申込みを審査する部門もあります。教育内容や提出書類の信頼性。そもそも何を審査すれば北米レベルの人材かどうかわかるのか、その基準も作られています。試験一回では測れないものは無限にありますから。
以前も書きましたが看護師と言う名称は登録者のみ使える言葉で、過去に持っていても、海外で免許を持っていてもこの土地で登録していなければ看護師と名乗ることは許されません。無断使用をすれば虚偽罪で罰せられます。タイトルさえも北米では法的効力があるのです。
日本で看護師をプロとして自律させたい、と思っている方は海外のレギュレーション団体(免許を管理する団体)に足を運んでみてください。一回だけの国家試験がさほど意味のないことに気づくだろうし、免許保持者がどこで何をしていて、どんな教育を受けているのかデータで常に把握していることの重要さもわかります。どんな組織を作ってどんなシステムを作れば定義の3〜6に該当する自治団体ができるのかわかると思います。それでこそ、質の確保をして公民から信頼される自治体=プロとなるのです。
続く