1、夢に関する雑考のまとめ
独断と偏見も大有りかも知れないが、傘寿を過ぎた自分が、今迄に見た夢体験を種々振り返り、概読した前記の書の他に以前読んだことのある「臨死体験」上下(著者:立花 隆 出版社:文春文庫)本の内容も参考にして、「夢」についての雑考を当方なりに次のように要約・箇条書きした。
(1)夢を見ている者(夢見者)にとっては、夢という異空での事象は、それが今のことか過去のことか又は未来のことなのか、時制区分が判然としない場合が多い。けれども通常、夢見者は、見ている事象の殆どは現在のことだと認識して夢見をしている。
(2)夢は、睡眠中でも完全には休んでいない脳の認識・知覚・再生機能の一環として、脳中で展開される不完全で部分的な、人生ドラマのようなものである。
(3)そのドラマでは。風物や登場人物などの輪郭が不鮮明な状態で情景描写され、途中中断や場面の急変換などをしながら展開されている。
(4)夢の舞台の正面(中心)部分は、かなり鮮明に時として色つきで見えるが、周辺部分は漠然としてはっきりは見えない画面構成になっている場合が多い。
(5)見る夢の情景移動は、四方が開けた横方向に向かうものが殆どで、時には際限のない天上や逆に地下又はトンネル等視界が限定された方向性の下で行われている。
(6)見る夢は、当夜限りで類型を異にする一遍ものが殆どであり、日を異にして似たような夢の続編を見ることはまずない。
(7)睡眠中は、脳の数理計算的機能は休止しているためなのか、夢の中での数を伴う推理・計算場面に類する夢は殆ど見られない。
(8)夢のパターンは、観方により異なる。しかし、その内容には、願望(例:ビッグな宝くじ当選や一富士・二鷹・三茄子に類するような夢)・不安や失意・失望(例:病気の進行)・恐怖(例:猛獣に襲われそうになる夢)・思い出など過去の経験や体験、希望や現状改善に関する思いなど身近な生活感覚に由来するものがかなり多い。
(9)願望・希望に関する夢の範囲・程度が大きくなればなるほど、その夢は夢の中でも長くは続いて見られず、現実とのギヤップの大きさを知らされる「夢の又夢」で終わる傾向が大である。(例:プロ野球のスーパースターになり大活躍する夢)
(10)見る夢は、性別、その人の成長や年齢区分、知識経験の差等により、見る内容や程度、傾向区分上はかなりの差になって表れる。(例:子供の頃は電車の運転手、青年期に意中の人と結婚する夢)
(11)夢の中で「これは夢だ。今自分は夢をみているようだ」と認識して夢を見ている場合(専門用語上はこの種の夢は明晰夢と定義されている)は、その夢が原因で目覚め、その原因に関連する行動・行為(例:トイレを探す夢で目覚めて用足しをする)をするに至る。
しかし、夢うつつのままで夢と現実の識別が出来ない場合は、夢の中で夢に関する動作行為(例:幼児期の寝小便や立ち上がり等の寝ぼけ行為)を無意識のうちに行う現象を招き易い。なお夢の中での識別能力は、明晰夢化の継続学習により高めることが可能なようだ。
(12)苦痛・恐怖・警告受け等を伴う夢には、夢見者の身体等の一部の変化(痙攣、奇声、手足伸ばしや蹴り・叩き等)を伴う場合もある。この傾向は、神経過敏な者や多情多感な人ほどその表れ方が概して大きい。
(13)人は毎晩何らかの夢を見ている。だから後から聞かれれば、「そういえば昨夜は、こんな夢をみた・・」等と思い出すが、そうでない場合は、見た夢の多くは目覚めと同義に脳裏から消去されている。
(14)見た夢を記録に留めることを習慣化(夢日記的なもの)すれば、睡眠中の夢の観方やその夢の記憶の度合いを高めたりも出来そうである。
(15)死にそうになりかけた夢を見ている場合でも、健康な状態での夢の中では所謂「遊体離脱」のような現象(例:三途の川を渡りそうになっている自分と病床の自分の他に、もう一人の自分が空中から観ている状態)は起きないようである。
余談だが、当方は小四年の春、急性肺炎で三日三晩意識不明の際、臨死体験をし、深い井戸に落ちて行く夢を見た。その際、落ちて行く自分を井戸の真上の方から観ている自分がいた場面を今でも鮮明に覚えている。
2、付言
夢に関する研究は、アリストテレス(BC384-322)の時代には既に心理学の研究対象となっていたそうだから、実に古くて新しい学問であり研究の対象領域である。
今後この研究は、より詳しく追求されて行くことだろうと思う。現在この研究は、脳科学的な面と心理学的な面からに加え、膨大な事例研究等に基づく数理統計学的な面からもより体系的で科学的・専門的に推進されているようである。
実態が把握し難い「夢」という異空の事象」が、時代とともにより深く、広く解明されて近い将来その成果が、例えば、夢の中での学習や夢を利用した情操教育等の面でも目に見えるような形で、反映されるようになることを期待したいものである。
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