こんなに楽しい!みやび流押絵

各教室での押絵の作品や、道端で出会った季節の移ろい、クスッと笑えるテーマもありますよ~

祈りの押絵

2008年11月22日 | こんな押絵(押し絵)がありますよ

押絵を始めたい!と思って頂く時、その入り口は、ほんとに人それぞれ。
浮世絵や人形も含め、とにかくお顔の付いた人物がなさりたい方。
お花や風景といった自然のテーマがお好きな方。
誰もしないような、変わ~ったものが好きな方(これは私wink
何もかも忘れ、自分の世界と時間にのめりこみたい方、etc.etc....

今、淡路から三宮教室へ通ってこられるI さんは、もともとご詠歌の先生。
お弟子さんたちを伴い、高野山で押絵の曼荼羅をご覧頂いた時、こんな押絵がしたい!!と、即お電話で入校のご依頼が。
それからというもの、他の生徒さん達とは異なり、お地蔵さまや梵字、仏画に関する作品ばかりを作ってこられました。
お友達には勿論、お世話になっておられるお寺へも、完成した作品はすべて納められ、当初からの夢は「いつか観音さまを作ってお寺へ納めたい」ということでした。
でもその夢は、押絵歴数年のI さんにとって、望むことすら無謀に思えるほど大きなもので、「死ぬまでにはきっといつか」くらいに考えておられたのですが・・・
とうとう、その時がやってきました!!
先月、認知症の進まれた80半ばのお母様が入所しておられる施設から抜け出され行方不明に。
無我夢中で探し回られ、水路の傍でうずくまっておられるのが見つかったのは明くる日のこと。
丸々一昼夜、「とにかく死んでてもいいから、絶対に姿を見つけ出してやりたい、その思いで必死でした」と、今でも涙ながらに語られるⅠ さん。
ご自身も介護のお仕事に従事されるお立場で、今回の出来事は、なんともやりきれない複雑な思いだったことでしょう。
そんな時に、永年、師と仰いでおられるお寺のご住職が重い病に・・・
ご自身の中の、大きな二本柱が揺らぐのを必死で止めたいと思われるI さんの口から 「観音さま・・・とても無理だと思うんですけど・・・できますかしら?」
 「大丈夫ですとも!!がんばりましょう!!」
前々から、坐像がいいかしら、いや立像の方が・・と、夢のこととしてご相談はしてきているのですが、ちっともまとまらずに。
でも今回は、I さんの情熱がまっすぐに入り込んできてもらったように、自分でも不思議なくらい手が進み、ひと晩で下図を描き上げることができました。


「機が熟す」という言葉が好きです。
心の奥底から、止むに止まれぬ思いが湧き出てこない限り、いくら形を整えても夢は実現しません。
反対に、どれだけ困難で不可能に感じる道も、本気でやろう!と思った時、そこはもう既に目的地の半ばだと思います。
この等身大ほどの大きな観音さまに、祈りの心いっぱいで向かわれるI さんが、少しでも心安らがれるように・・・と思いながら描いていると、不思議なことにI さんそっくりの観音さまになりました。
急がなければいけない、二人三脚の始まりです。