地獄のような精神科を後にし、大量の薬を手にしながら私の心は希望に満ちていた。
これで治る!
普通の暮らしに戻れる!
まるで魔法の薬を手に入れたような気持ちだった。
そして帰宅して早速処方された通りに薬を飲んだ。
確かかなり種類があったので一瞬怯んだがその時の私はもう生きるか死ぬかの所まで追い詰められていたため「薬を飲む」という選択肢しかなかった。
数種類の薬を飲んで30分程経っただろうか。
突如として頭がグルグルし始め、吐き気が襲ってきた。
え?何これ?
意味が分からずただひたすらのたうちまわっていた。
その時は薬の知識もなかったため何を処方されたのかも全く覚えてないが、恐らくかなり強い薬を処方されたのではないだろうか。
とにかく酷い副作用に苦しみ、薬を飲む前より酷い状態になってしまった。
これには物凄い衝撃を受けた。
精神科の薬を飲めば治るとどの鬱病の本にも書いてあったからだ。
嘘じゃん、治らないじゃん。
数時間後、薬の副作用も薄まってきた中で私は絶望のドン底にいた。
もう死ぬしかないんだな。
結論は1つしかなかった。
私は実家の工具箱を探して業務用の大きなカッターを取りだし車に乗った。
その時に父が玄関に出てきて「今夜、カレー作ったんだけど食べるか?」と聞いてきた。
私は「これから死ぬから食べられないんだけどな」と思いながら「うん」とだけ返事して車に乗り込んだ。
借金問題でグチャグチャになっていた時期で久しぶりにした父との会話だった。
私はその時どんな顔をしていただろうか。
食べられず眠れずに死を決意していた私はどんな顔をしていただろうか。
それから今日まで私はその時に交わした父とのたった一言の会話と私を心配そうに見つめる父の顔が忘れられずにいる。
きっとこれからも一生忘れる事はないと思う。