もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

みんな彗星を見ていた  星野博美

2017-05-19 17:15:21 | BOOK
私的キリシタン探訪記
そうサブタイトルがついている通り
日本にキリスト教を広めに来た人々(宗派で呼び名が違うことを初めて知った)
キリスト教徒となった日本の人々
彼らに対する権力の弾圧
人々のその後を調べてゆくうちにスペインにまで旅をした筆者。

星野さんはキリスト教徒ではない。
ただ疑問に思ったことを調べ始めると納得するまで止まれない人なのだ。
あきれるほど頑なな部分を隠さずに、愚直に答えを探していく。

私は星野さんの文章が好きで読んだ。
キリスト教の日本での布教にもリュートにも興味があったわけではなく
教科書でさらりと習った知識しかなかったので
本の中に書かれている残酷な弾圧と
殉教者に対するキリスト教の考えに初めて触れてげっそりしてしまった。
それでも400ページ以上を読み通せたのは
星野さんが自分の感じたままに行動し、綴った文章にひっぱられたからだ。

~私個人はカトリック教会の教義にはついていけない部分がある・しかし少なくとも、この「あなたの存在を忘れない」というすさ
 まじいほどの 執念には目を見開かされる。
 列聖調査の複雑なシステムや度重なる神学的議論は、突きつめれば殉教者を「記憶する」という一点に行き着く。
 記憶するために、調査し、記録する。そして、伝え続ける。
 それはそっくりそのまま、私たち日本人が最も不得意、あるいは意図的にやろうとしないことではないだろうか。~

何百年も前に海路で遠い異国に布教に出向き、迫害をうけ殉教した聖人を今でも敬う地元の信者たち。
それは彼らの異国での行いが記録され、後にその事実を調査し裏付けたからだ。

布教ではなく、国策で海外移住させられた人々の記録、
大空襲で殲滅された東京やほかの都市の人々でさえ確実には記録として残されないこの国。
それを考えてしまった読後。

コメント
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