もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

みかづき 森絵都

2021-02-28 23:41:56 | BOOK
図書館本

森絵都はあまり読んでなかったな、と思い借りてみた。
宮部みゆきか宮本輝以外でこんな分厚い本を読むのは久し振りすぎて
読むのに手こずるかとおもいきや
文章のリズムと物語の面白さにどんどん読まさりました。

昭和36年
戦争が終わってから16年しかたっていない頃
すでに政治に翻弄されていた教育について考えに考え
文部省を敵と思い込む赤坂千明は
自身の理想の教育の場所として塾(学習塾)を開くため猪突猛進していた。
その千明に見込まれ巻き込まれ
一緒に塾を運営するばかりか結婚まですることとなる大島吾郎。
二人と千明の子である蕗子、祖母の4人家族の人生を中心に
日本の学習塾の歴史を描くことにより
政治、行政、教員組合、誰かの思惑など
子供に関係ないところでおきる一貫性の無い学校教育の変節を
沢山の資料を基に描いている。
難しい本を読むよりも戦後教育についての概要が分かるうえに
昭和30年代から平成にまで3代にわたり教育に関わった一家とその周辺の人々が
清廉潔白ではなく、
商売敵との駆け引きの生臭さ、
子育ての失敗や感情のもつれに足を取られながらも教育から離れない
その姿に引き込まれた。

一緒に塾をやらないかと誘った時に千明が吾郎に語った言葉
「正義や美徳は時代の波にさらわれ、ほかの何ものかに置きかえられたとしても、知力は誰にも奪えない。
そうじゃありませんか。
十分な知識さえ授けておけば、いつかまた物騒な時代が訪れたときにも。何が義であり何が不義なのか、
子どもたちは自分の頭で判断することができる。
そうじゃありませんか」

この言葉は、今こそ重い。
コメント
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