(本頁は「男鹿三山の花図鑑(5)初夏編」の続きです。)
鳥海山や秋田駒ヶ岳ならば、七月に高山性お花畑が最盛期を迎えるが、
標高1000mに満たない男鹿三山にそれを期待するのは無理と言えよう。
それでも他の低山に較べたら、花の種類はやはり多いと思う。
ヤマブキショウマ Aruncus dioicus var. kamtschaticus
次のトリアシショウマとよく似ており、間違えやすいが、こちらはバラ科。
個人的には主に葉で識別している。小葉の葉脈が平行で10本程度と多く、名前のように
ヤマブキの葉に似た印象が有る。男鹿ではヤマブキショウマは山頂部、オオサクラソウ群生地に多い。
開花はトリアシショウマよりもやや早い。したがって毛無山では同時期に山麓でトリアシショウマ、
山頂部でヤマブキショウマの花を見ることが出来る。
2019/07/11
トリアシショウマ Astilbe odontophylla
こちらはユキノシタ科。男鹿毛無山では山麓部で多く見かける。
オカトラノオ Lysimachia clethroides
2019/07/11 トリアシショウマ 2019/07/11 オカトラノオ
オオムラサキシキブ Callicarpa japonica var. luxurians
男鹿にはムラサキシキブの仲間が二種類、自生していると聞いたが、
この個体は花や葉の大きさからオオムラサキシキブではないかと思う。
2019/07/11
ホタルブクロ Campanula punctata
ホタルブクロはポピュラーな野草なのに何故か秋田県内ではほとんど見かけない。
しかし男鹿三山では山麓から山頂部にかけてちらほら見かける。
ホタルサイコ Bupleurum longiradiatum var. elatius
黄色い小花をつけるセリ科。東北ではあまり見かけないが、五社堂の上の道端には比較的多い。
2019/07/22 ホタルブクロ 2019/08/02 ホタルサイコ
盛夏の山頂部に咲く花たち。
キバナカワラマツバ Galium verum subsp. asiaticum
ウツボグサ Prunella vulgaris subsp. asiatica
キバナカワラマツバとウツボグサ 2019/07/22
イブキジャコウソウ Thymus quinquecostatus
秋田県では稀少な植物で、男鹿と和賀山塊だけとのこと。本山山頂部の限られた場所に生育。
キリンソウ Phedimus aizoon var. floribundus
ベンケイソウ科。山頂部や岩場に多い。
2019/07/22 イブキジャコウソウ 2019/07/22 キリンソウ
エゾカワラナデシコ Dianthus superbus var. superbus
山頂部に見られるものは、高山性のタカネナデシコとの説も有るが、
写真の株は自衛隊道路の脇に咲いていたものなので、低地性のエゾカワラナデシコとした。
2019/07/22
7月下旬、本山毛無山の山頂部ではトウゲブキやミヤマトウキなど高山性の要素も見られるが、
立ち入り禁止エリアと重なるので割愛させて頂く。
クガイソウ Veronicastrum japonicum
山頂部で少しだけ見かける。よく似たヤマルリトラノオは山ではなく海岸近くで咲いている。
2020/07/18
エゾアジサイ Hydrangea serrata var. megacarpa
2019/07/22
再び、中腹樹林下に咲く地味な花たち。
ウメガサソウ Chimaphila japonica
イチヤクソウ Pyrola japonica
2019/07/11 ウメガサソウ 2020/07/28 イチヤクソウ
ランの仲間
クモキリソウ Liparis kumokiri
オオヤマサギソウ Platanthera sachalinensis
2019/07/22 クモキリソウ 2019/07/22 オオヤマサギソウ
ヤマユリ Lilium auratum
男鹿三山では東山麓の人里近くに多い。
2019/07/22
サワギク(ボロギク) Nemosenecio nikoensis
秋田では珍しいキク科植物。男鹿では真山や本山のスギ林の中に少数見かける。
ヤマジノホトトギス Tricyrtis affinis
2019/07/22 サワギク 2019/08/02 ヤマジノホトトギス
ダイコンソウ Geum japonicum
バラ科。山の道端に多い。果実の先が鉤のように曲がり、ひっつき虫になって運ばれ、増えるのだろう。
2020/08/10
クルマユリ Lilium medeoloides
全山の林中に疎らに分布する。登山道脇で見るものは登山道の草刈り時、意識的に刈り残したものと聞く。
オオウバユリ Cardiocrinum cordatum var. glehnii
2019/08/02 クルマユリ 2019/08/02 オオウバユリ
「(7)晩夏&初秋編」へ続く。
(本頁は「男鹿三山の花図鑑(4)晩春編」の続きです。)
男鹿の山では、オオサクラソウの花が終わると、樹木の若葉が茂り、林は少し暗くなる。
この時期、秋田の他の山では花がめっきり少なくなるが、男鹿では必ずしもそうではない。
ランの仲間やデワノタツナミソウが最盛期を迎えるせいだろうか。
なお表題は「初夏編」としたが、本項では五月下旬以降、六月いっぱいに咲く花を扱ってみた。
空梅雨の年を除けば、この時期の男鹿は雨に祟られることが多い。
特に山頂部はいつも霧に包まれている印象がある。
ムラサキヤシオ Rhododendron albrechtii
中腹では五月連休明け頃から散発的に咲いているが、本山山頂近く南東斜面の大群生地では、
開花が五月下旬以降なので、初夏の花とした。
2020/05/28 ムラサキヤシオ
2019/05/14 ムラサキヤシオ 2020/05/28 サワハコベ
サワハコベ Stellaria diversiflora
ウゴツクバネウツギ Abelia spathulata var. stenophylla
2019/05/29 ウゴツクバネウツギ
2019/05/29 キンランとウゴツクバネウツギ
キンラン Cephalanthera falcata
数は少ないが、運が良ければ道端で出会える。
よく似た白いタイプも見かけ、ササバギンランかと思ったら、工藤茂美先生によると、
ユウシュンランとのこと(写真は省略)。
ミヤマカラマツ Thalictrum filamentosum var. tenurum
山頂部や渓谷沿いの林中に生育している。
2020/06/01 キンラン 2020/05/28 ミヤマカラマツ
エビネ Calanthe discolor
2020/05/28 エビネ 2020/05/28 ヤマシャクヤクの群生
ヤマシャクヤク Paeonia japonica
よく目立つ花だが、雨の多い時期に咲き、しかも開花している(蘂が覗いて見える)のは僅か二、三日と短命なので、
開花シーン遭遇は運次第。男鹿の山には比較的多いが、山盗りは厳に慎むこと。
ヤマシャクヤク 2020/06/01
イチヨウラン Dactylostalix ringens
中腹より上に多い。意外に地味なので見過ごしやすい。
ギンリョウソウ Monotropastrum humile
ツツジ科、腐生植物。男鹿には無いものと思っていたら、2020年、山頂部で見つけた。
2020/05/28 イチヨウラン 2020/06/13 ギンリョウソウ
ホウチャクソウ Disporum sessile
かつてユリ科だったが、現在はイヌサフラン科、前頁のチゴユリと同じ属。
次のナルコユリ類に似た雰囲気だが、分類学上は離れ離れになってしまった。
2020/06/01
ミヤマナルコユリ Polygonatum lasianthum
かつてユリ科だったが、現在はキジカクシ科、アマドコロ属。
2020/06/09
ユキザサ Maianthemum japonicum
かつてユリ科だったが、現在はキジカクシ科、マイヅルソウ属。
なお写真は割愛するが、男鹿三山にはマイヅルソウも多い。
ギョウジャニンニク Allium victorialis subsp. platyphyllum
かつてユリ科だったが、現在はネギ科。
かつて男鹿三山には多いとされたが、乱獲が祟り、最近はさっぱり見かけない。
2020/06/01 ユキザサ 2020/06/13 ギョウジャニンニクの花
トケンラン Cremastra unguiculata
次のサイハイランと同属。「杜鵑蘭」と書くが、
これは花につく紫色の斑点を鳥類のホトトギス(杜鵑)の胸から腹部にある斑紋に喩えたとされる。
分布域は限られ、開花は一週間程度と短命なので見過ごされることが多い。
秋に出葉して越冬。葉は花の頃に枯れだすという変わった生活史を持つ。
2020/06/13 トケンランの群生
2020/06/13 トケンラン 2020/06/21 サイハイラン
サイハイラン Cremastra appendiculata
林の中に比較的多いラン。一見、枯れたような形と色合いだが、近づいて下から見ると意外に綺麗だ。
トケンランよりも少し遅れて咲く。
コケイラン Oreorchis patens
毛無山では中腹より上で多く見かける。
場所によってはデワノタツナミソウの花カーペットの中から咲くと言う珍しい花風景を呈する。
コケイラン 2019/06/15 デワノタツナミソウ 2019/06/15
デワノタツナミソウ Scutellaria muramatsui
分布域は新潟以北の本州日本海側の山地だが、最初に発見されたのは男鹿と聞く。
毛無山や真山の登山道沿いでは、青紫の絨毯を敷き詰めたように咲き、
これはオオサクラソウと並び、男鹿を代表する花風景と思われるが話題になることは無い。
初夏に一斉開花した後、秋遅くまで残り花を見かける。
2020/06/21 デワノタツナミソウ群生
スズムシソウ Liparis makinoana
希少種なので、生育場所は内緒。もし見かけても採取は言語道断(盗っても庭での栽培維持は困難)。
そっとしておいて欲しい。
2020/06/13
ジガバチソウ Liparis krameri
コバノフユイチコ(マルバフユイチゴ) Rubus pectinellus
地べたを這うように生えるが、一応、低木。実は冬ではなく、真夏に成熟する。
フユイチゴの名は、実に関係なく、常緑葉で冬に枯れないことによる。
2020/06/21 ジガバチソウ 2019/06/15 コバノフユイチゴ
アオヤギソウ Veratrum maackii var. parviflorum ?
シュロソウ Veratrum maackii var. japonicum ?
男鹿の山林には、山麓から山頂まで、↓のようなシュロソウ科の仲間がいっぱい生えている。
図鑑を見ると、花が紫褐色のものをシュロソウ、黄緑のものをアオヤギソウと呼んでいるが、
ここには両方が混生しており、中間的な色合いのものも有る。何と呼んだらいいものやら。
アオヤギソウ? 2020/06/21 シュロソウ? 2020/06/21
この時期、咲く花としては他にニッコウキスゲ(一説ではトビシマカンゾウ)がある。
毛無山の海に近い斜面に有り、道路から辛うじて見えるものの、場所が急傾斜の岩場なので近寄れず、
いまだに確認できていない。
「(6)盛夏編」へ続く。
(本頁は「(3)陽春編」の続きです。)
連休明けには男鹿の名花オオサクラソウが咲き出す。
男鹿三山はこの頃、一年で一番、花の種類が多い時期を迎える。また登山者も多くなる。
オオサクラソウ Primula jesoana
鮮やかな花を咲かせる大型のサクラソウで、東北では男鹿と白神山地、津軽半島の一部に産する。
男鹿では毛無山山頂部西斜面に生育し、遊歩道から容易に観察できる。
それなのにロープの中に踏み込んで撮影する人が絶えない。困ったものだ。
2020/05/15 オオサクラソウ
2019/05/14 オオサクラソウ 2020/05/08 キクザキイチゲ
キクザキイチゲは山麓では三月から四月にかけて咲くが、山頂部では五月、オオサクラソウと同時期に咲いている。
フッキソウ Pachysandra terminalis
草ではなく、ツゲ科の小低木。毛無山山頂部に群生している。
2020/05/15
ミヤマカタバミ Oxalis griffithii
男鹿三山では中腹より上、山頂部に多い。
コキンバイ Geum ternatum
キジムシロ属 Potentiilla の仲間に似るが、ダイコンソウ属 Geum に属す。
根茎は地を這い、葉、花茎ともに根生し、丈が低く、他の似たような花と識別できる。
雑木林の林内に群生するが、男鹿ではそれほど多くはない。
2019/05/14ミヤマカタバミ 2020/05/15コキンバイ
男鹿の名花オオサクラソウを紹介する関係上、本頁は毛無山山頂部に咲く花からスタートしたが、
この時期は麓の方にも花が多い。
一旦、下山し、山麓の五社堂から山頂部にかけて咲く花を列記してみる。
シャク Anthriscus sylvestris
早春の芽吹きは美しい緑色で、春のエネルギーを感じさせる。
草丈は1m前後になり、葉はフワフワとして、白い花は咲き揃うとけっこう見ごたえがある。
花が終わると、ただちに枯れて休眠する。生活史はスプリングエフェメラルそのものだ。
2020/05/08
シソ科を三種類ほど。
オドリコソウ Lamium album var. barbatum
海岸近くなど山麓部に群生する。
ラショウモンカズラ Meehania urticifolia
名の由来は有名なのでここでは敢えて記さない。
国内自生のシソ科としては最大クラスの花を咲かせる。
園芸植物としても使えそうだが、普及しないのはランナー(走出茎)で増殖するせいかもしれない。
日本の狭い庭やプランターには収まりきらない花なので、山に置いて見るのが無難だろう。
2019/05/04 オドリコソウ 2019/05/14 ラショウモンカズラ
ニシキゴロモ Ajuga yesoensis
キランソウやジュウニヒトエの仲間。
花は小さく白色でさほど綺麗ではないが、紅紫色を帯びた葉とのコントラストがいい。
2019/05/04
チゴユリ Disporum smilacinum
かつてユリ科だったが、現在はイヌサフラン科。
2019/05/04 中腹のブナの木 2019/05/14 チゴユリ
キバナイカリソウ Epimedium koreanum var.koreanum
メギ科。日本海側に多いイカリソウの仲間。花色は淡い黄色。
この花が咲く山麓の道端にはシラネアオイの残花も多い。
2020/05/08
ルイヨウボタン Caulophyllum robustum
メギ科。葉の形がボタンの葉に似るのでこの名がついたと聞く。
なお「るいよう」とは類葉と書き、「葉が似る」との意味だ。
ルイヨウショウマ Actaea asiatica
キンポウゲ科。ショウマとは同じ科のサラシナショウマ(開花は秋)を指し、その葉に似るのでこの名がついた。
花は地味だが、夏以降は黒い実が割と目立つ。
2019/05/04 ルイヨウボタン 2019/05/14 ルイヨウショウマ
ウラシマソウ Arisaema urashima
海岸近くなど山麓部で見かける。この仲間は中腹より上はキタマムシグサ?が多い。
ツルシキミ Skimmia japonica var. intermedia f. repens
ミカン科の常緑低木。茎の下部は地を這う。花は地味だが、実は赤く熟し、よく目立つ。
2020/05/08 ウラシマソウ 2020/05/15 ツルシキミ(雄株)
ヤマツツジ Rhododendron kaempferi
男鹿に咲くツツジは本種と後出のムラサキヤシオの二種類。山麓に多いが、山頂部にも少し現れる。
2019/05/14
地味な花が少し続く。
タニギキョウ Peracarpa carnosa var. circaeoides
クルマバソウ Asperula odorata
2019/05/14 タニギキョウ 2019/05/14 クルマバソウ
ハクサンハタザオ Arabis gemnifera, Arabidopsis halleri subsp.gemmifera var.senanensis
丈は50センチ内外有るが、ヒョロヒョロとか弱いので、雨のあとなどはよく倒れている。
県内の他の山ではほとんど見たことが無い。毛無山の山頂部、遊歩道脇に多い。
ワサビ Eutrema japonicum
本山東斜面のスギ林に群生している。
2019/05/14 ハクサンハタザオ 2020/05/08 ワサビ
キブシ Stachyurus praecox
2020/05/08
オオタチツボスミレ Viola kusanoana
湿った林に多い。タチツボスミレの仲間では大型で草丈は20センチを超える。
また多くの花が地上茎の途中から伸びる花柄に付く。
ミヤマスミレ Viola selkirkii
毛無山では中腹から上に多い。花色が紅味を帯びる株もある。
2019/05/14 オオタチツボスミレ 2020/05/15 ミヤマスミレ
オクエゾサイシン Asarum heterotropoides
トウゴクサイシンと較べるとやや高所に分布。男鹿では毛無山や本山の山頂部に多い。
トウゴクサイシン Asarum tohokuense
かつてウスバサイシンとされたが、2007年以降、独立した種とわかり、新種として命名記載された。
2020/05/15 オクエゾサイシン 2018/04/28 トウゴクサイシン
次は「(5)初夏編」。
(本頁は「(2)早春編」の続きです。)
四月になると男鹿の花はカタクリやスミレ類が主役となる。
特に五社堂から上の毛無山稜線の小道はスミレ類が切れ目なく咲いており、スミレロードと呼びたくなるほど。
カタクリ Erythronium japonicum
男鹿では五社堂の周辺や海岸林の下など低いところに多く、山頂部ではあまり見かけない。
2019/04/18 五社堂境内のカタクリ群生
ヒメニラ Allium monanthum
れっきとしたスプリングエフェメラルの一種だが、丈5cm、花も約5mmと小さく、つい見過ごしてしまいがち。
近くによるとプーンとニラ臭がする。
2018/03/27 カタクリのアップ。 2015/04/10 ヒメニラ。廻りの葉はシャク。
タチツボスミレ Viola grypoceras
2019/04/18
ナガハシスミレ(テングスミレ) Viola rostrata var. japonica
四月の男鹿では一番多いスミレでみごとな群生を作る。天狗の鼻のように後方に突き出した距が特徴的。
2019/04/18
アオイスミレ Viola hondoensis
男鹿では最も早くから咲くスミレ。花の時期の草丈は3~5センチと低く、花も1センチ程度と小さい。
葉は円形で径2~3センチと小さいが、花後に5センチくらいの大きな葉を出すと言われる。
2020/03/31
スミレサイシン Viola vaginata
大型のスミレで花の径は2~2.5センチ、葉は花が咲き出すと急速に展開し、心形で長さ5~8センチになる。
サイシンとはウマノスズクサ科のウスバサイシン(現在のトウゴクサイシン)のこと。
展開した葉の形がそっくりなのでこの名が付いたと聞くが、場所によっては混生することもあり、紛らわしい。
2018/04/28
なお男鹿三山では他にミヤマスミレも多いが、開花時期がやや遅いので次の頁で紹介する。
また黄色い花のオオバキスミレは秋田県内の低山にはとても多いのに、男鹿ではまだ見たことが無い。
フデリンドウ Gentiana zollingeri
量はそれほど多くないが、雑木林の下で見かける。
2018/04/28
アラゲヒョウタンボク Lonicera strophiophora
地味な小低木だが、山麓の沢筋から山頂部まであちこちで見かける。開花も山麓では早く、三月から咲いている。
ナツトウダイ Euphorbia sieboldiana
男鹿三山には多く、あちこちで見かける。花のつくりは面白い形をしている。
2020/05/08 アラゲヒョウタンボク 2020/05/08 ナツトウダイ
ニリンソウ Anemone flaccida
スプリングエフェメラルのひとつだが、開花時期はやや遅い。
五社堂の登り口や海岸林の下に群生している。
山菜として食用になるが、同じ場所にはトリカブトも多く生えている。
芽出し時期の姿はよく似ているので間違えやすい。無理に採取して食べないことを強く奨める。
2019/04/18
エンレイソウ Trillium smallii
以前はユリ科だったが、現在はシュロソウ科。花も葉も「三/tri-」を基軸としている。
男鹿には同じシュロソウ科で「四」を基軸とするツクバネソウもふつうに見られる。
ミヤマキケマン Corydalis pallida var. tenuis
花のつくりはエンゴサク類に似るが、性質は強く、荒れ地に最初に侵入するパイオニア植物でもある。
葉茎を折ると臭い乳液が出るので、「クソタレバナ」などの方言名がある。
2020/04/16 エンレイソウ 2018/04/28 ミヤマキケマン
四月も下旬になると、男鹿の山林ではシラネアオイが咲き出す。
この時期の林の中は明るく、藪もあまりひどくないので自由に歩き回れる。
秋田県内の他の低山に較べると、草木の花が質量ともに多いと感じる。
シラネアオイ Glaucidium palmatum
五社堂周辺の山林には多く、登山道脇でもよく見かける。何故か山頂部や真山では見たことが無い。
ヒトリシズカ Chloranthus japonicus
近縁のフタリシズカは男鹿では少なく、本山のスギ林で少々見かける程度。開花はヒトリシズカより約一ヶ月遅い。
2019/05/04 シラネアオイの群生
2020/05/15 シラネアオイ白花 2018/04/28 ヒトリシズカ
オオカメノキ Viburnum furcatum
全山に多い低木だが、花の咲くものや実の成るものは比較的少ない。
2018/04/28
ホソバノアマナ Lloydia triflora
ユリ科、生態的にはスプリングエフェメラル(春植物)と思われる。
草丈は20~30センチ。花の径は1.5センチ程度、葉は披針形で二、三枚と少なくヒョロヒョロとした印象。
秋田県内では今のところ毛無山でしか見たことが無い。
五社堂付近の低所から山頂部までの山林内に広く、かつ疎らに分布している。
開花は五社堂付近ではカタクリが終わる頃から、山頂部では少し遅れ、五月中下旬に咲く。
近縁の高山植物、チシマアマナは東北では早池峰山に産する。
ヒメイチゲ Anemone debilis
秋田県内の高山、亜高山帯に多いが、男鹿では毛無山山頂付近で見られる。
山頂部では一番早く咲く草花だと思う。
2019/05/04 ホソバノアマナ 2018/04/28 ヒメイチゲ
次は「(4)晩春編」。
(本頁は「男鹿三山の花図鑑(1)はじめに」の続きです。)
男鹿は対馬暖流の影響も有り、春が来るのがすこぶる早い。
三月上中旬、ここにフクジュソウを見に行くのが、ここしぱらく慣例になっている。
この時期、秋田の内陸部はまだ分厚い雪に覆われており、フクジュソウが咲くのは四月下旬以降だ。
男鹿ではそれよりひと月以上も早く咲くことになる。
秋田の春は男鹿からやって来ると言っても過言ではない。
フクジュソウ Adonis ramosa
男鹿のフクジュソウは園芸盗掘が祟り、一時期は減ったが、最近は回復傾向にあるように感じる。
雪の少ない年は二月中に咲き出すこともある。中腹の沢筋では遅れて四月以降に咲き出すものもある。
2018/03/17 フクジュソウ
ナニワズ Daphne jezoensis
ジンチョウゲ科の小低木。男鹿ではフクジュソウと並び、早くから開花する。
戸賀湾周辺の海岸林の群生はみごとだ。
2020/03/25 五社堂の参道、999段の石段 2017/03/17 ナニワズ
キクザキイチゲ Anemone pseudoaltaica
秋田では最も量が多いスプリングエフェメラルだと思う。花色は白と青紫があるが、男鹿では何故か白が多い。
山麓では三月中から咲き出すが、毛無山山頂部では五月に開花。
スプリングエフェメラル(春の妖精)なので、花後、実が付くと、葉は融けだし、初夏には消滅する。
2018/03/27 キクザキイチゲ
アズマイチゲ Anemone raddeana
前出のキクザキイチゲによく似ており、場所によっては混生するが、
葉の形や萼弁裏側がピンク色を帯びる点などで識別する。
キクザキイチゲと較べると、数は少なく、人家付近に限定的な傾向がある。
ミチノクエンゴサク Corydalis orthoceras
後出のエゾエンゴサクに較べると、とても華奢な印象。
秋田では非常に多いスプリングエフェメラルだが、男鹿ではあまり多くない。
2018/03/27 アズマイチゲ 2019/03/17 ミチノクエンゴサク
キバナノアマナ Gagea lutea
秋田では重要なスプリングエフェメラル。男鹿では山麓の人家周辺に多い。
エゾエンゴサク Corydalis ambigua(オトメエンゴサク Corydalis fukuharae )?
名称については二説有り、個人的にはいずれとすべきか迷っている。
男鹿毛無山では山麓の長楽寺の参道沿いに多いが、中腹の道端や山頂部オオサクラソウ群生地でも少し見かける。
花色はコバルトブルーのほか、やや紅味を帯びるものや薄い紫も有る。
2011/04/13 キバナノアマナとエゾエンゴサク?。この年は大雪で開花が遅かった。
2011/04/13 キバナノアマナの群生 2012/04/15 エゾエンゴサク?のアップ。
2012/04/15 エゾエンゴサク?の群生。
キクバオウレン Coptis japonica var. anemonifolia
オウレンの仲間は岩手ではセリバオウレンをよく見かけるのに対し、
男鹿をはじめとした日本海側の山ではキクバオウレンばかりのように感じる。
キツネノカミソリ Lycoris sanguinea
五社堂の下や戸賀湾など海岸沿いの山林に多い球根植物。
カミソリのような葉は早春に出て初夏には枯れる。花は葉が無い時期、真夏から初秋にかけて咲く。
スイセンやヒガンバナ同様、有毒植物なので葉を食べてはいけない。
2019/03/17 キクバオウレン 2015/03/15 キツネノカミソリの新葉
ちょっと気になる芽出しを追加。
2016/03/27 アオヤギソウ?の芽だし 2016/03/27 ギョウジャニンニクの芽だし
男鹿の山林にはギョウジャニンニクがとても豊富だと聞いていたが、私自身はあまり見たことが無い。
過度の山菜採りで激減したのかもしれない。
なお同時期、アオヤギソウ(シュロソウ)?も芽を出す。
ギョウジャニンニクとよく似ているが、こちらは葉の筋が顕著だ。有毒植物なので取り扱いは慎重に。
2016/03/07 アキタブキ Petasites japonicus subsp. giganteus
2019/03/28 ヒメアオキ Aucuba japonica var. borealis
早春に見かけるキノコの仲間を二種類。
2018/03/27 ベニチャワンタケ Sarcoscypha coccinea
2016/03/27 シロキツネノサカズキモドキ
Microstoma floccosa var. macrospora
早い年にはカタクリが三月中から咲き出す。この花が咲くと男鹿は一気に陽春モードになる。
2020/03/31 カタクリとキクザキイチゲ
次は「(3)陽春編」。