(本記事は自ホームページの旧記事をブログ用にリメイクしたものである。)
今年(2010年)の夏は異常な暑さ続きだった。
こういう時は、高い山の上や北海道にでも行き、花を眺めたいところだが、諸事情あって出来ないでいた。
ところが8月下旬の平日、ひょっこり休みが入った。
隣県岩手ならそう遠くは無いし、鍾乳洞なら涼しかろうと、日帰りで龍泉洞に行くことにした。
途中、岩手県内のとある高原を通りかかったら・・・
意外や意外!そこには素晴らしいお花畑が広がっていた。
その景色や花風景は信州の名だたる高原を髣髴とさせるものがあった。
こんな近場にこんな素晴らしい場所があったとは!!
結局、この日はこの高原を探索するだけで終わった。龍泉洞はまたいつかの機会としよう。
この高原にはオミナエシがやたらと多かった。
そして意外だったのはミソハギもやたらと多かったこと。
オミナエシとミソハギ。
ともに秋田では盆花として墓参りなどでよく使われているが、
両者が一緒に自生しているところを見るのは初めてかもしれない。
通常、オミナエシは乾いた草原に、
ミソハギは休耕田や沼地など湿ったところと別々に生えているものだが、ここでは一緒なのである。
ミソハギ ヤナギラン
ミソハギが優勢すぎるせいか、高原の女王様、ヤナギランはここでは精彩を欠いていた。
他にもいろんな花が咲いてた。
タムラソウ タムラソウにモンキチョウ
キク科・他の面々
ヤナギタンポポ カセンソウ
ヤナギタンポポは男鹿の寒風山で見ている。
ユウガギク
ヤマハハコ(キク科はここまで) ハナイカリ(リンドウ科)
ハナイカリは
30数年前、十勝の海岸で群生を見た以外は、数年前、美ヶ原でちらっと会ったきり。
秋田県では絶滅危惧種ⅠA類。
ウメバチソウ。奥の白花はゲンノショウコ。 シモツケ(バラ科)
尊敬する植物学者、故・中尾佐助氏の著作、「花と木の文化史」(岩波新書)の中に、
氏が選んだ世界の「自然十景」というコーナーがある。
そのうちの一景が、今回、私の見た花風景に共通するように思ったので、いささか長文だが、該当箇所を抜粋引用してみる。
『メドウ・ステッペ~追憶の花園』
中国東北部大平野の北辺、黒竜江の南側に小興安嶺と言うさざなみのように重なった丘陵性の山脈がある。
そこにメドウ・ステッペの花園がひろがる。
私は昭和15年の夏にそこを南から北へ一直線、黒竜江の岸まで旅行し、その美しさに一目惚れしてしまった。
丘陵の間の低地は湿地となり、流れや沼が連なり、
スゲの野地坊主(やちぼうず)が茂り、通過困難になっているが、丘陵の中腹は花園になる。
オミナエシ、キキョウ、ワレモコウ、ナデシコ、リンドウ、ヤツシロソウ、フウロソウ、シオン、トウヒレン、
カラマツソウ、ヤナギタンポポ、ツリガネニンジンなどのような、
日本の秋の七草そのもの、またはそのごく近縁種が一面に咲き出してくる。
オミナエシの多い所は黄色の原に、キキョウは紫色の原に、カラマツソウは白い花園になったりしている。
花の間を歩き回るのは容易で、よく見ると下生えの小型の草の花も多い。
そして丘陵の上にはシラカバの疎林があり、その尾根の上にはウスユキソウの花が咲いている。
日本人の目から見て、奇異でもなんでもないありふれた花だが、みごとに集団美となっている。
これがメドウ・ステッペの花の群落である。
・・・ 日本国内では、いわゆる高原と言われる場所で、
これに似た花風景が少しだけ見られる(例えば、信州の高原、他には九州の阿蘇や九重山周辺、伊吹山、北海道の一部など)。
このような花風景、残念ながら秋田には無いが、直ぐ隣の岩手県には有った。
ススキ
「牧歌編」に続く。
古い話題で恐縮ですが、この時は私がそれまでに見た高原の花シーンとしては一番きれいだと思いました。
同じ場所に年を替えてまた同じ時期に行ったとしても、この時と同じではありませんでした。
同様のことは他の山のお花畑や紅葉でも言えますね。