(冬場は山には行きません。夏場の回想記事が主体となります。
その一環で「高山植物」のカテゴリーを創設、山の花について語って行きます。今回はその九編目です。)
ウィキペディアによれば、
「コマクサは、美しい花と、常に砂礫が動き、他の植物が生育できないような
厳しい環境に生育することから『高山植物の女王』と呼ばれている。」との書き出し。
また登山情報サイトYamakei Online(植物写真家の高橋修氏)では、
「『高山植物の女王』コマクサ、荒涼とした場所に咲く孤高の花。高山に可憐に咲くコマクサは、
「高山植物の女王」と称され、人気の高い花だ。可憐な姿の一方で、その生き方は力強い。」と始まっている。
2018/07/02 岩手山のコマクサ
私も同感だ。コマクサの女王としての称号は荒涼とした生育地環境と対になっているものだと思う。
その分布域は千島列島・樺太・カムチャッカ半島・シベリア東部の東北アジアと日本の北海道から中部地方。
東北では岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王連峰の三ヶ所(尾瀬の燧岳も加えると四ヶ所)とのこと。
本記事では東北の三ヶ所の山で生育する様を報告してみる。
まずは私の住む秋田の秋田駒ヶ岳。
この山ではコマクサはマップ上の大焼砂と焼森の二箇所で見られるが、今回はメインの大焼砂を訪ねてみる。
大焼砂は横岳の南側稜線上にあり、黒っぽい火山礫に広く覆われている。
2017/07/10 秋田駒ヶ岳・大焼砂のコマクサ群生地
ぱっと見には何も生えていないようだが、薄青ピンクの点々はこれ全てコマクサなのだ。
2017/07/10 秋田駒ヶ岳・大焼砂のコマクサ群生地
2017/07/10 秋田駒ヶ岳・大焼砂のコマクサ群生地
植物保護のため、この群生地に立ち入ることは出来ない。
しかし何か所か、登山道からこのように間近にコマクサの姿を見ることが出来る。
2017/07/10 秋田駒ヶ岳のコマクサ
2017/07/10 秋田駒ヶ岳のコマクサ
とても楚々とした姿だが、それは地上部だけの話。
地下部は凄い。根っこの長さはなんと100 cmにも達するとのこと。
それを知っていたら安易に生育地に踏み込むなんて出来ない。少なくとも1m以上は離れて見るべきだ。
2015/06/21 秋田駒ヶ岳のコマクサとタカネスミレ
コマクサはこのような礫地に単独で生えることが多いが、
秋田駒ではタカネスミレやオヤマソバなど限られた植物と混生するエリアも有った。
なお開花期はタカネスミレは六月いっぱい、オヤマソバは八月以降とずれがある。
2015/06/21 秋田駒ヶ岳のタカネスミレ群生とコマクサ
2015/08/16 秋田駒ヶ岳のオヤマソバとコマクサ
2015/08/16 秋田駒ヶ岳のイワブクロ
2015/08/16 終盤近いコマクサの大株
2015/08/16 孤高のコマクサ。背景は田沢湖と女岳、男岳。
岩手山では、コマクサは山頂付近にもあるが、北側の焼走りルート途中にある群生地が凄い。
その地の標高は1250mから1300mくらいだろうか。
こんな低い場所なのに登山道の上にも下にも斜面はコマクサばかり。
特に上の方ははるか山頂まで続いてるように見える場所も有った。
2018/07/02 岩手山焼走りルート、コマクサ群生地
秋田駒ヶ岳大焼砂よりも群生の規模はこちらの方がずっと大きい。
ひとつひとつの株も大きく、花数も多かった。それを登山道から間近に眺められる点も凄い。
大株、多花のクマクサ
登山道はザクザクの火山砂礫なのでとても歩きにくいが、
おそらく日本一立派なコマクサがうじゃうじゃ咲いてるのを見られるのだから文句は言うまい。
このような登山道が数百メートル続く。
正式名称ではないが、仮に「コマクサロード」としておく。
2018/07/02 岩手山山頂付近のコマクサ
山頂付近のコマクサ(右上)はとても小さく疎らで、咲き出したばかりだった。
なお下の群生地(仮称コマクサロード)は、以前に較べるとミネヤナギなどの低木が増えて来たとのこと。
2018/07/02 仮称コマクサロードにて。ミネヤナギやヤマハハコが侵入した場所。
すると土壌が安定するのか、他の草花も続々と侵入してくるようになる。
花はまだ咲いてなかったが、ヤマハハコやマルバキンレイカ、クサボタンなど低山性の種類も多く生育していた。
また秋田駒同様、タカネスミレも混生している。
更にコミヤマハンショウヅルのようなつる草や鮮やかな色合いのハクサンチドリなども咲いていたのは意外だった。
コミヤマハンショウヅル ハクサンチドリとミネヤナギ穂花
やがてこの場所はスッポリと他の植物に覆われ、コマクサは消えるかもしれない。
しかし岩手山が噴火し、新たな噴出物に覆われた荒地が広がると、
いつのまにかコマクサがまた生えだし、新たな遷移が始まる。
コマクサは遷移の先頭に立つ植物だ。
こういう植物のことを先駆植生(パイオニア)と呼ぶと以前習った記憶が有る。
女王様の本当の姿は荒地の魔女、いや勇猛果敢なる切り込み隊長だったのだ。
2018/07/02 仮称コマクサロードにて。裸地のコマクサ。
東北で三ヶ所目のコマクサ生育地、蔵王山は秋田市から遠いので一度しか行ってない。
2008年8月9日、蔵王エコーラインを走る機会が有ったので、一応、報告しておく。
2008/08/09 蔵王山駒草平
2008/08/09 刈田岳山頂付近のコマクサ ちらりと御釜が見えた。
コマクサの生育地として知られる駒草平や刈田岳山頂では疎らにしか生えていなかった。
この山のコマクサの花色は秋田駒に較べると、白っぽい感じがする。
山はガスに覆われ、景色はほとんど見えなかった。でも、一瞬、御釜が見えたのでよしとしよう。
以上。
もう、実物は見ること出来ず、残念ですが
すばらしい画像です。ありがとうございます。
コマクサは人気ありますね。私も自足で見に行けるのはもう何回あるかわかりませんが、
歩ける限りは見に行きたいと思います。
ひねくれものゆえ、世の多数派ほどコマクサに萌えませんが、もちろん咲いていればうれしい。
3大コマクサのうち岩手山の焼走りだけまだです。そのうちに、と思っていますが……
岩手山は山頂付近のコマクサもきれいでいっぱいでした なので、焼走りに行く情熱がイマイチに(笑)
岩手山のコマクサは、私が登った時は山頂部はほんとに疎らでまだ蕾ばかりでした。ところが
焼走りの群生地は標高が低く早く咲いたせいか、真っ盛りでした。
この場所のコマクサの特徴は株が大きく、花数が多い点ですかね。
楚々とした姿がお好みの方は唖然としてしまうかもしれませんね。
コロナのせいで越境しにくい状況が続いております。今年の夏はなんとかおさまって欲しいものです。